第5章 歌声 (裏:政宗、家康、信長)
「っば…」
驚いたのは、家康だった
距離を取ろうと上半身を持ち上げると、猫の体のスペースが徐々に大きくなり人の姿に
闇夜ではっきり見えはしないが、明らかに女の輪郭が目に入る
(っ…!)
急ぎ、掛けていた羽織をかぶせて体を隠しそっぽを向くが
湖の反応が無い
(な、なんで俺がこんな目に遭うんだ)
少し赤くなった目元
湖の反応が無く寝たのかと思い、湖の方を向くと
湖は、寝ぼけているのかぼんやりとした口調で声を上げた
「だ…れ…?」
たどたどしい口調に違和感を覚えながらも
「あんたが、離れなかったから連れてきたんだ」
そう少し早口に言うと、「ん…ありがと…いえやす…」と返す
(なにが、ありがとうなんだ?なんか…様子がおかしい…寝ぼけているのか?)
「湖?」
はぁー…と長く息を零すのが耳に入る
寝所には明かりを灯していない
家康は、立ち上がり部屋から持ってきた明かりを寝所の明かりに灯すと
湖の方を見て固まった
「な…」
「んん…いえやす…あつぃ…」
湖は、羽織をはずそうとしているので思わず駆け寄って押さえつけた
「あんたっ何考えてるの?!」
「あつぃの・・・」
湖は寝ぼけている、そう思っていたがやはりおかしい
頬は赤く染まり、目は潤んで、息は苦しげ
(…なんだ?)
布団を押さえつけた家康の手を湖は掴んで自分の頬へ引き寄せる
「手…冷たくて…きもちいい…」
はぁ、と熱のこもった息を漏らす
手を握られた家康は、その光景から目を外すことができずにいた
(…まさか…)
どう見ても、湖の様子は媚薬を盛られたように見える
湖自身は気づいていないようだが、苦しいのか腰が動き足をすりあわせ家康の手に助けを求めるように、ぎゅっと握りしめている
「っ…」
「いえ…や、す…」
握った手を首下に移動される
湖は火照った体を冷やしたいだけで、特別深い意味は無いだろう
ただ、家康も男だ
女子の素肌に触れると、意識もおかしくなる