第23章 大切な人に贈り物を (裏:政宗、家康、光秀、三成)
「わかってる」
ひらひらと片手を上げると、政宗は襖の方を向き座った
そんな政宗を目で確認しながら、湖は几帳の後ろにと入る
しゅる…と衣擦れの音がし始める
そんな音を聞きながら、政宗は目を瞑りながら思い返していた
(溜まってる…か…自分で言っといて何だな…ゆっくり過ごすのは、あのいかれた商人の事があった前っきりか…)
「なぁ…お前…」
「うん?」
(…ここから逃げたいとは思わないのか?)
出てこない
確かに秀吉が言っていたとおり、湖自身が巻き込まれていく所もあるが…
ここで姫として扱われていれば、今後また同類の事件に巻き込まれる可能性は高い
そんな事を政宗が考えていることは知らず、着物を着終えた湖はその着物をつまみ、うーーん…と顔をしかめた
「政宗・・終わったよ…」
几帳の方へ身体毎向ければ、湖は恥ずかしそうにそこから出てきた
「これ…すごく動きやすいけど、鈴が着てたのより生地…薄い気がするんだけど…」
湖が言うのはスカート部分の生地だ
鈴の時には膝丈ほどのスカートだったが、湖が今着ている着物は足首まであるパンツタイプだ
(まるで…アラビアンナイトみたいなパンツ…)
裾を絞ってあるので、馬に乗るにも足裁きは楽だ
色は綺麗なグラデーションがかった紫、足もとに行くにつれ桃色がかった白になっている
綺麗な色だが蝋燭の明りですら、足の輪郭がはっきり見えているくらい生地が薄い
輪郭だけだからいやらしさはない
上衣は、普段と変わらない着物生地
桜色とでも言うべきか、綺麗な折り模様の入った生地だった
膝上20センチほどの着物だが、合わせは重ならず、その下に胸当てを重ねている
二枚の上衣を固定しているのは、腰紐だ
帯のように硬くは無い、柔らかな生地で腰元に縛っているのだ
ほんと、異国…中国とかアラブとか、そっちのお姫様のような素敵な着物だが…
「動きやすいけど…なんだか、落ち着かないよ」
「そうか?似合ってるぞ」
「…っ、ありがとうございます」
頬を染める湖に、笑いを零せば湖はそんな政宗に頬を緩ませる
「どうした?」
「…ううん。政宗だなぁ…って。…ちょっとでも、話が出来て嬉しいの」