第23章 大切な人に贈り物を (裏:政宗、家康、光秀、三成)
佐助が、作り方は秘密だと言った
なら、おそらく類似する香りはそう簡単には無いのだと思う
それを光秀が持っていたのだ
この時点で気づいて問いただしていたらどうなってただろうか?
だが、湖は
(…違うよね…似たような香りかなぁ…だって、光秀さんが佐助くんと?うーん…)
「湖、どうした。可愛くない顔をしているぞ」
いつの間にか真っ正面にいた政宗は、湖の皺の寄った眉間をつんつんと指さしていた
「わぁ…や、やめてよ。びっくりするよっ」
「…よし。その顔の方が幾分かましだ…受け取れ、湖」
政宗にそう言って手渡されたのは、前に鈴が着ていたのと似たようなデザインの着物だった
「これ…漢服?」
「そうだな、だが乗馬しやすいように色々形を変えてみた」
鈴が着ていた漢服に比べ、手渡されたそれは袴にあたるスカートの部分が長く、胸当てはおしりを隠すように長い
そして羽織は胸当てと同じ着丈でできており、腕部分は七分丈ほど
動かしやすいようにか腕回りは狭めな着物になっていた
(袴だとちょっとごわごわしてて着るのに時間がかかったんだよね…これ、確かに着やすいかも)
「ありがとう、政宗。でも、こんなにたくさん…みんな、どうしたんですか?」
「あんたの言った風習じゃないの…俺はただの礼だから…あの奇妙な食べ物の」
横から手が出てきた
家康だ
出てきた手の拳が握られているところを見れば、そこに何かが入っているのだろうと無意識にその手の下に両手を差し出せば、ころりと手の平で転がった装飾品
帯止めだ
七宝焼きのようにつるりとした感触
黄から赤にグラデーション掛かった土台に、小花模様が散っている
「帯どめ?」
「…なんでもあんたの好きに使えば良い…」
「ったく、素直じゃ無いな…家康も、俺たちも、お前が言った風習にしたがって、ただ喜ばせようとしてるだけだっていえば良いだろ?」
「…別に…そうゆうのじゃないですから…」
だが、家康の頬が薄ら染まるのを見れば、政宗の言う通りなのだろうと湖は思った
「…ありがとう、家康」
「ただの礼だから」
「それでも、ありがとう。皆さんもありがとうございます。全部、大切にしますね」
彼らに姿勢をただし、頭を下げれば
かすかに笑った気配を感じ、そして信長が最初に口を開いた