第23章 大切な人に贈り物を (裏:政宗、家康、光秀、三成)
かけられた羽織から三成の香りがふわりとした
「え…三成くん、寒いでしょっ・・いいよ…っ」
「私は、ここに居ましたから平気ですよ。湖様が暖まったらお返しください」
にこりと微笑む三成、彼から借りた羽織は今まで羽織っていた本人の温もりをそのままに暖めてくれた
「…じゃあ、お借りします。ありがとう」
「それと、これは私から…」
羽織から手を離すと、三成は湖の手に赤い布を置いた
それは、鮮やかな赤に黒猫が装飾された丸巾着だった
「わぁ…っ、鈴みたい…可愛いっ」
「気に入ってもらえましたか」
「え…これ、私に?」
「ええ。今日のぷりんとけーきのお礼です」
「っ、ありがとう、三成くんっ」
にこりと微笑む三成に、寒さ以外で頬に熱が灯る気がする湖
「これは、俺からだ」
そんな声がすれば、秀吉が丸い物体を差し出す
朱色、金色、緑色とたくさんの糸が使われている鞠だ
「近頃、蹴鞠は無くなってきたが…城下の女子が鞠つきをしているのを見てな。湖にも鈴にも丁度良いかと思ってな」
「綺麗…ありがとう、秀吉さん」
「湖」
来い来いと手招きされて、光秀に寄っていけば彼が持っていたのは小さな小瓶
「なんですか…これ?」
「媚薬だ」
「っ…!そんなもの要りませんよっ!!」
「冗談だ、そんなに慌てるな…」
クツクツと意地悪な笑みを浮かべながら光秀は、その小瓶の口を開き湖の鼻先に持ってくる
それは、最近嗅いだことのある匂いとよく似ていた
甘い花と柚の…
「これ…」
「髪を梳くときに使う香油だ。これをお前にやるとしよう」
「…光秀さん、これ…」
光秀は湖が口を開くのを塞ぐように、その唇に指を当てた
「っん…」
「そんな甘い声で鳴くな、湖」
「~~っ…ちがぅっ!」
小瓶を押しつけるように湖に持たせれば、光秀は「俺は宗久殿にねぎらいの言葉を掛けてくるとしよう…」といい出て行ってしまう
(なんか…はぐらかされたよね…これ、絶対佐助くんの持ってきてくれたコンディショナーと同じ匂い…どうして光秀さんが…?)
香りは間違い無く佐助が作ったものと一緒だった