第23章 大切な人に贈り物を (裏:政宗、家康、光秀、三成)
「よしっ、これだけあれば十分!ありがとうございます」
「いえいえいえいえいえいえ…っ、安土にいる間ならいくらでも献上いたしますっ!では、姫様!ご用があれば、いつでもお越し下さいっ、失礼いたしますっ!!」
商人は、急に話し方が変わると逃げるように帰って行ってしまった
湖は、さようならも言えずに去ってしまった彼を、少々気の毒そうに見送った
(言っとけば良かったかな…ごめんね、おじさん…)
「湖、宗久が来たぞ」
台所から政宗が顔を出し、湖を呼んだ
「はーい!今行きますっ」
湖は台所へと向かう
器にたっぷり入った牛乳を抱えながら
(う…ちょっと重かった…)
よいしょと、台所の仕切りをまたぐと板張りの上に器をのせた
すると、久しぶりの声色が上から聞えた
「おや、湖様。ずいぶんたくさん頂きましたね…砂糖、足りるでしょうか…?」
「宗久さん、こんにちは」
「はい、こんにちは。お約束の砂糖ですよ」
そう言いながら、袋にいっぱい入った砂糖を手渡される
「わぁ…こんなに…」
「少々奮発いたしました。今日は、私にもごちそう頂けると聞いたので」
ふふっと笑う宗久の笑みは色気が漂う
「はい。夕方になりましたら、また来てくださいね」
そんな宗久の笑みに何も動じず、湖はにこりと微笑み返すので、そばで見ていた政宗はふっと笑うのだ「宗久、残念だったな」と言いながら
その後、政宗は手際よく調理を進めていく
いつもの政宗の料理の他に、湖の提案で雉肉をすりつぶしてハンバーグも作ることになっている
「次は、ぷりんとかいうのをつくるんだろう」
「うん」
そう言うと、たくさんの卵と暖めて甘みの加えた牛乳を混ぜ始める湖
そのけっこうな量に悪戦苦闘していれば、見かねた政宗が手を出してくる
「ほら、貸せ…こうで良いか?」
「うん、ありがとう」
プリン作りは簡単であっという間にあとは冷やすだけになった
小分けに竹の入れ物に流し入れたプリンを、女中が外へ冷やしに運ぶ
「あれは、あれでできあがりなのか?」
「本当は、キャラメルを作るんだけど…お砂糖別に使いたいから、黒蜜を使うの。食べるときに、黒蜜を少し入れて食べようと思う」
「なるほどな…で、お前のそれはなんだ?」