第23章 大切な人に贈り物を (裏:政宗、家康、光秀、三成)
「今日って…もしかしてずっと居たの?」
「湖さんが、火傷したところくらいから」
茶を飲みながら佐助が話せば、「う…幸村に言わないで、馬鹿にされそうだから」と湖が言う
「これ、ありがとう。すごく嬉しい…でも、私何も用意してなくって…あ、でも…」
「いや。俺は渡しに来ただけだから…」
湖は、何かを思い出したように衣装箱を開けた
「これ…忍び道具の役に立つ?立つなら、お返しにもならないけど…どうかな?」
湖が取り出したのは、シンプルな黒いヘアゴム
それは、湖が仕事中に使っていた物で鞄にしまってあったものだ
「…」
「あ、こんなんじゃ…お返しにもならないよね。ごめんっ」
「違うんだ。まさか、お返しがくるとは思わなくて…ありがとう、ありがたく頂く。頂いて…色々考える」
佐助の顔は、もう何かを考えているようだ
(よかった)
湖は、そんな佐助を見て小さく呟く
「私も…考えなきゃ」
「湖さん?」
「あ。うん、私も考えなきゃいけないと思って…佐助くんに相談に乗ってもらってもいい?」
そして、サプライズしようと思っていた事が公になってしまったこと
でも、やはり何かプレゼントしたいのだと湖は話す
「…なら、これ…使ってみる?」
佐助が再び懐から物を取り出した
今度は小さな布袋に入った物だ
「これは?」
「ベーキングパウダー…ふくらし粉と言った方が良いか…俺も、謙信様にサプライズで米粉でクリスマスケーキならぬホットケーキを作ってあげようと思ったんだけど…失敗したんだ」
「ベーキングパウダー…っ、佐助くん、本当になんでも作れちゃうんだねっ!でも…失敗って?」
「夢中になりすぎて、そもそも謙信様が甘い物を食べない事を忘れてた」
確かに、謙信と言えば梅干しのイメージ
湖もそう思い、ホットケーキを目の前に怪訝な顔をする謙信が浮かんだ
「ふくらし粉自体は全く問題無いから。良ければ、これを使ってほしい」
「嬉しいけど…もらって良いの?」
「かまわない。もともと不要になって、どうしようか考えていたところだから…ごめん。湖さん、そろそろお邪魔するよ…また、来る」