第23章 大切な人に贈り物を (裏:政宗、家康、光秀、三成)
その夜、湖は震える身体を火鉢に当てながら襖の方を見る
雪が止んでいるのか、音も無くしんとして…湖の着物の衣擦れの音がよく聞えた
「…さむいな…」
コンコンッ
頭上から板を叩く音が聞える
上を見上げれば、天井板が外れるのだ
「佐助くん」
「正解。夜分に失礼、湖さん」
シュタン…と佐助が畳に降りる音が…しない…
「雪が音を消してくれるから、忍び込むには苦労しないけど…寒かった」
「ふふ、今、お茶入れるね」
「ああ、ありがとう」
佐助は、湖に進められ火鉢の側に座ると出された茶を飲んだ
「最近、来なかったから…てっきり越後にいるんだと思ってたけど」
「そうだね。年の瀬もあるけど、今は越後にいる」
「…?あれ、じゃあ…今日は?」
そう言えば、佐助は懐からなにやら取り出した
ガラス瓶に入った液体だ
「クリスマスプレゼントを届けに参上したんだよ。にんにん」
「っぷ…「にんにん」って…ふふ、「クリスマスプレゼント」なんて今回は聞けない言葉だと思ってたよ」
「だと、思ってきてみた」
湖が瓶を受け取れば、佐助は説明を始める
「コンディショナーにあたる物を作ってみたんだ。材料は聞かないでくれ、企業秘密だ」
「コンディショナー…!?すごい、佐助くん、そんなの作れるの?」
「まぁ、忍び道具を色々開発する過程で出来たものなんだけど…香りを決めるのに時間が掛かってなかなか渡せなかったんだ」
(香り?)
瓶の口を開ければ、花と柑橘系の匂いがした
「湖さんのイメージで、甘い花のベースに冬の柚を加えてみたんだ」
「すごい…良い香り…」
「…気に入ってもらえて良かった」
「…これ、もしかして届ける為にわざわざ来てくれたの?」
湖が驚きながら言えば
「少し早いサンタクロースになってみた」
と真顔で佐助が返すのだ
「あわてんぼうのサンタクロース?」
ふふっと笑いながら佐助を見れば、「…やっぱり来て良かった」と小さく言う
「佐助くん?」
「いや、最近なかなか来れなかったのもあるけど、タイムホールの事も良い報告出来ずにいたから…気落ちしていないかと思ったんだけど…」
「あ…」
(心配…してくれてたんだ…)
「でも、今日の様子を見ていたら気落ちはしていないようで安心した」