第23章 大切な人に贈り物を (裏:政宗、家康、光秀、三成)
走ったまま出産の補助した湖は息荒く血まみれで、そんな状態の湖に商人は感激したようにその手を握って上下し喜んでいる
そして、子牛がふらふらと立ち上がって母牛の乳房に吸い付くのだ
(な…なにが…??)
なにが起ったのか解らないが、湖が血まみれなのは解る
言葉を紡ごうとしても、走っていたせいで喉が張り付き旨く声がでない
(まったく…女子に体力で負けるなど…少し、精進せねばなりません…)
「大したもんだっ!せっかく高く買った牛を駄目にしそうで参っていたんだっ!お嬢ちゃんに助けられたっ」
嬉しそうに笑う商人に、湖も笑顔になる
「だが、すまない…汚れちまって」
「あ、良いんです。こうなるのは解ってましたから…でも、どこかでお湯をもらいたいのですが…」
湖は綿羽織を脱ぎながら、自分の手や着物を見て苦笑いする
(それは、そうでしょう…女子がそんなに汚れて)
はぁーと、一つ深呼吸すると宗久がようやく声を出した
「湖様、ここからなら私の家が近くにあります。そちらなら湯も沸かせますよ」
(全く…どうゆう女子なのでしょう…)
結局、商人はお礼にと1週間後牛乳を無料でわけてくれる事になった
湖は大喜びで、商人に礼を言っているが…
(そりゃ商売道具を救われたのですから。無料奉仕安いものでしょう…これから彼は無事だった牛で商売を続けられるんだから…)
いつまでも子牛の様子を見ている湖をようやく引き離し、馬小屋に居た馬を駆りた
そして、近くにあった宗久の家へと二人は向かったのだ
宗久は台所ですぐにお湯を沸かすと、桶に湯を張って湖を呼んだ
すると、申し訳なさそうな顔をして湖がやってくる
風呂を沸かすには時間がかかる
少ないが、冷たい水を使わせるわけにはいかないと「少ないですが」と、湖に桶を手渡した
「ありがとうございます」
そう言った湖をそこに残し、宗久は部屋に戻って着物を探し始める
(確か、前に贈ろうと思った着物が…あったはず…)
そして、押し入れから女に贈るはずだった着物一式を出した
「処分せずに正解でしたね…」
それは、宗久のたくさん居る女子の一人に贈るはずだった品
別れてしまって終ったままになっていた