第23章 大切な人に贈り物を (裏:政宗、家康、光秀、三成)
「一応…最近、城下で牛乳を売っている商人が来ていると聞いて…その人を探していたんです」
「ああ、確かに来ていますね」
(昨日会って、牛乳という飲み物を勧められましたね…あれは、妙な噂があって口にしませんでしたが…)
「え?宗久さん、お知り合いですか!?」
きらりんと湖の瞳が輝く
「いえ…知り合いではないのですが…」
「そうですか…」
違うと言えば、一瞬でしゅんと暗い顔をする
「…ですが、会えますよ」
「っ、本当ですか!?」
また顔を上げて喜びを見せる湖
(…ころころと表情が良く変わる…)
まるでこどものように感情を外に出す湖
宗久はそんな湖をもっと喜ばせたくなってくる
「…会いますか?」
「っ、はい!お願いします」
ところが、会ってみれば牛乳の値段の高い事に湖は驚いてしまう
(嘘…スーパーとかで200円しないでしょ…)
だが、此処は戦国時代
ましてや
「お嬢さん、これは幻の食材だ。この位、安い方だ」
と、宣言されてしまう
(諦めて違う物にするしかないか…)
はぁと、ため息を付く湖を宗久は眺めている
(金など…織田様に言えばいくらでも出すでしょうに…どうしても秘密にしたいんですね…)
「湖様、私が買いましょうか?」
「っ、いえ。駄目です!」
欲しい物が目の前にあるのに、買うというのに、要らないと言う湖
(本当に不思議な女子です…)
仕方ないと残念そうにしていれば、牛乳を売っていた商人が「買わないなら、急ぎの用があるんだ」と慌てて引き返そうとした
「…?どうしたんですか?」
湖は、商人の慌てように尋ねてみると、彼は牛が難産なのだというのだ
「お手伝いしますっ」
「は??」
(今…なんと??)
湖の言葉に目を丸めていれば、商人が半分怒ったように湖に荒く言葉を掛ける
「何言ってんだ、お嬢さん。どっかの商家の娘だろう?牛の出産なんて…」
「任せて下さいっ!私、専門医ですっ」
だが湖は商人の荷物を持つのを手伝いながら走り出そうとするのだ
「ちょ、ちょっと待って下さい。湖様!?」
「牛の難産は、大変なんですっ逆子だったら治してあげないとっおじさん、どっちですか!?」