第23章 大切な人に贈り物を (裏:政宗、家康、光秀、三成)
すっと肩に手を置かれ、湖は「え・・」と宗久を見上げて驚いたように見えたが、すぐに笑みを戻した
「では…宗久さん」
「はい、姫様なんでしょうか?」
「…私が、宗久さんっと呼ぶなら…宗久さんも姫は止めて下さい」
白い息を吐きながら話す湖は肩に置かれた手を払う様子はなく、ぷぅっと少し膨れてみせる
「では…湖様…で」
(手を払わないんですね…)
宗久はてっきり手を払われると思っていたが、そんな様子を見せない湖に驚いた
「…本当は「様」も要らないんですけど…姫より良いです」
自分を見てクスクスと笑う湖に調子を狂わされた宗久は、自らその手を下ろす
「それで、湖様は何か探されていましたか?難しい顔をされていましたね」
(この寒い中、城からでてくるなんて…)
「え…あ、見てたんですか?そんな顔してましたか?」
片手で自分の眉間部分を撫でる湖は、少しだけ言い淀んで口を開いた
「内緒にしてくださいね…実は、信長さまたちに日頃の感謝のしるしに…ちょっと探し物をしていたんです」
「…贈り物…ですか?」
「はい。でも、そんなに贅沢なものじゃなくて…ささやかな物で…」
そう言うと、自分が目の前に居るのも忘れたように「うーん…」と考えたす湖
宗久にとっては新鮮だった
自分でも自覚しているが、見目は良い方だ
大半の女子は、話しかければ自分をきらきらとした瞳で見続け話題振ってきて時間を繋ごうとする
肩に手を乗せれば、頬を染め喜ぶ
だが、湖は肩に手を乗せても普通に微笑むだけ
話を振ってもただ返すだけで、今は考え込んでしまっている
物心ついた頃から、女にちやほやされるのが当たり前な宗久にとって新鮮な反応だ
「あ、すみません…考え込んでしまって…宗久さんはどこかにお出かけですか?」
「いえ。私の用事は湖様の付き添いです」
「…え…」
ぽかんと口を開けて呆ける湖
そして、おかしそうにクスクス笑い出すと…
「私の用事に、宗久さんの付き添いは要らないですよ。もう、宗久さん…そうやって、女の子達とお出かけするんですね」
と、宗久を不要だという湖
(要らない…とは…初めて言われました…)