第23章 大切な人に贈り物を (裏:政宗、家康、光秀、三成)
城下に向かう湖は、歌いながら石段を降りていく
ふんわり積もった雪を深靴で踏めば、藁の跡が付いた
綿の入った羽織に深靴
(まるで映画みたいね)
自分の姿にクスリと笑う
冷たい雪が頬に落ちるが、プレゼントを考えるワクワクで寒さなんて二の次だ
途中であった家臣に挨拶し、厩舎に寄って世話役達と立ち話をし歩いて行く
影にお守り役が居るとは知らずに
市に着くと、ふらふらと何かを探す湖
(幸村は…居ないよね…秀吉さんたちだって年の瀬のせいか忙しそうにしているし、佐助くんも最近来てないし…)
「さて…何処に売ってるのかな?」
無意識に赤くなった指先に息を吹きかけた
そんな独り言を聞き逃さなかった男が側に居た
たまたま通り掛かっていた宗久だ
(おや…?姫様ではないですか…一人…いや、ちゃんと監視付きですね)
湖の後ろに隠れるように着いてくる武士に気づくと、宗久はにこりと笑って一礼する
あちらも気づいたようで慌てていたが、宗久が口元に人差し指を持ってきたので意図に気づきゆっくりと一礼返す
(湖様には秘密なんでしょうね、お守りがついているのは…)
ふふっと笑いが零れた
「どうしたんです?旦那さん、急に笑い出して」
側にいた女が宗久に尋ねる
宗久は女に笑みを浮かべると持っていた傘を彼女に渡した
「いえ。知り合いを見つけまして…急で申し訳ないですが、今日はこれで…傘を持っていって下さい。まだ雪が降りそうですから」
「珍しいですね。私より良い女が歩いていましたか?」
女は少し驚いたように笑いながら手を振った
「ええ。また、お誘いしますよ」
そう返せば、市に紛れていった湖の姿を探す
チリリリン、リリン…
鈴の音を頼りに探せば、湖は直ぐに見つかった
見れば、難しそうな顔でキョロキョロとしているのだ
(ほんと、可愛い女子ですね。私の趣とは異なりますが…)
「姫様」
後ろから掛かった男の声に、湖はくるりと振り向くと少し驚いた顔をしてから微笑んだ
寒さで色づく頬が化粧をしたように見える
「今井様、こんにちは」
「今井など、他人行儀ですね。宗久とお呼び下さい」