第23章 大切な人に贈り物を (裏:政宗、家康、光秀、三成)
(猫みたいだ…)
ふふっと笑みが浮いてしまう
(猫…みたい…?いや…)
「鈴さん…ですよね?いや…あなたは、湖様ですね…」
鈴の名を呼んでから気づく
彼女の風貌に
女中に聞いていた通り
稲穂色の髪と目、髪飾りに…そして
(甘い花の匂い…)
先ほどの鈴から香った香りでは無い
この女子からするのは甘い花の香りだ
(女中達から、姫様はいつでもいい香りがするのだと聞いていましたが…確かに…だが、これは化粧やお香の香りではない…)
震える肩に鼻先をつけて確認する
(やはり…この方から香っている…なんの香りだ…知りたい…)
商売人として、興味を持ったことは追求したい資質がある
それに、こんなに肌の綺麗な女子…見たことが無かった
(女子遊びは好きですが、こんなに綺麗な肌の女子…いままで出会っていない…)
「…美しい化け猫さん、さぁ…私と遊びましょうか」
化け猫だろうが、何者であろうが…宗久は組み敷いた彼女を離す気にはなれない
「は…、はなして…っ」
だが、彼女は小さな抵抗をする
震える声が聞えた
「それは…お断…」
シュ、タンッ…ッ!
勢いよく襖が開かれ驚きそちらに気を取られれば、何も言わずに組み敷いていた女子を素速く引っ張り出す人物
「…秀吉様?」
「お前…っ」
秀吉は宗久を睨みながら、抱えた湖に自分の羽織を頭から被せその身を隠す
「湖様っ…すみません、私が鈴様から目を離してしまい…っ」
湖に駆け寄った三成に、秀吉はその身体を預ける
すると湖は「大丈夫」とまだ震える声でそう言うのだ
「三成、湖を」
秀吉が指示を出し、三成は隣の間へと湖を連れていく
それと同時に天主へ足を入れたのは、信長と家康だ
「…やっぱり…」
「宗久、貴様…俺の物に手をだしか…」
恐ろしい顔が三つ
だが、宗久はそんな顔をされるのもなれた様子で
「いえいえ。まだ手は出しておりませんよ」
と苦笑しながら答えたのだ
「…それより、あの姫様の事を詳しく教えていただけませんか?…それとも、噂を広めた方がよろしゅうございますか…化け猫の姫が安土に居ると…?」