第22章 心から
それを無言で見ていた二人にはと気づくと女中は「も、申し訳ありません」と顔を赤らめる
「いや、叱ってやれ」
と、秀吉は信長の足を手拭きで拭きながら苦笑する
そこに三成が書簡をいくつか持って参上した
「おはようございます。…新しい遊び?で、ございますか?」
「…えっと…うん。そんなところ?」
「…湖様…」
じとっとした女中の視線を逸らすように、湖は顔を背ける
信長は立ち上がると、三成から書簡を受け取る
そして秀吉は、湖に小言を言い始めるのだ
「湖、お前…雪遊びするなら深靴を履けって言ったろ!?だいたい、なんでそんな薄着で庭に降りてるんだっ」
「えっと…木に鳥が居て…なんの鳥かなーって…」
「なんだっ、その良く解らん理由はっ!?」
「だってっ、私だって良く解んないけど、行きたくなっちゃうんだものっ」
((あぁ…鈴のせいか…))
それを見守る二人は、なんとなく理由がわかってくる
普通の猫なら暖かい場所で丸まっているが、鈴は好奇心旺盛な猫だ
人の言うことも理解出来るし頭のいい猫だ
だが、一度人になった鈴を見て解った
何に対しても興味芯々で確認しないと気が気じゃ無いのだ
近頃鈴を見ない
なんで出てこないのかは解らないが、なにかしら影響が出てきているのかも知れない
「秀吉様、もっと言って下さい」そう言いながら、女中は笑いながら湖の足を拭く
湖は、ぷぅっと頬を膨らませ外を見ている
(賑やかだな…)
書簡を横目に湖を見ていれば、三成が小さく言った
「…もう大丈夫ですね」
「そうだな」
目を書簡に戻す
「湖、あとで来い」
そういい信長は湖を見ると、三成とその場を去って行った
秀吉はまだ言い足りないのか、湖に説教を続けようとしている
「秀吉、貴様も来い」
そう言われた秀吉は、口を閉ざしため息を付いて後を追う
(…そんなに怒らなくても良いのに…でも…うん、これって鈴だよね…)
湖もなんとなく、自分がふらりと外に出てしまう理由は解っている
気をつけては居るが、何か視界を過ぎるとそこ場にふらりと吸い付けられてしまうのだ