第5章 歌声 (裏:政宗、家康、信長)
「っ…、あ…のぶなが…さま?」
目を瞬かせ自分を見る湖は、信長の片足に向かい合わせに座るような格好で信長より少し上から視線を下ろし見ていた
「…酒の席を途中で抜け、俺のつまみを食った罰を貴様に与える」
「…えぇ?!っなんのお話ですか?!あれ?皆さんは…私、どうして信長様のお部屋にいるんですか…?」
「貴様は質問ばかりだな、まぁ良い。だが、まず降りろ」
そう言われ、自分がどこに居るか悟った湖は…
「あ、すみま…っっん?!っ、?!きゃあ!」
降りようとしたところは、ようやく自分の姿に気づき悲鳴を上げた
(この女のとぼけた性格はだいたい解った…)
湖が、此処に来て一月程
湖の警戒心の無さ、愚かなほど人を信用し、物事を従順に捕らえる
この世では決して一人では生きられないだろうと思う反面、後の日ノ本の穏やかさがうかがえるとも思う
自分の目の前で、縮こまって震えている女は
面倒でもあり、退屈しない玩具でもあり、興味深い存在でもあった
信長は自分の羽織を脱ぐと、湖に投げて渡した
「…」
「っ……、ありがとうございます」
涙目の湖は、すぐに手を伸ばすとそれを羽織ろうとする
その手を信長は素早く取り、自分の方へ引き寄せた
「っきゃ…」
湖は片手を信長に取られ、もう片方を床につき四つん這い格好になった
「っの、信長様?!」
その姿を細めで見て少し間を置くと
「貴様は、話を聞いて居なかったな…俺は先ほど罰を与えると言っただろう」
湖は、びくりと体をこわばらせた
「さて…、罰は何としようか…」
「わ、解りましたっ、罰はなんでも受けますから、、羽織を着させてくださいっ」
どうにか片手で胸を隠し、太ももをしっかり閉じ信長に懇願する
信長は、ニヤリと笑うと湖の手を離した
湖は急ぎ羽織に手を通し、前襟をぎゅうっと握りしめ信長に向き直った
「っ、あの…」
「…そうだな…まずは、こちらに来い」
信長が指示したのは、天主から張り出した板張りの方
歩き出した信長の後ろを見ながら湖は不安そうに返事を返した
「は、はい…」
信長は柱に寄りかかり腰を下ろせば、湖と向き合うようになる
目の前には、不安な面持ちの女の姿