第5章 歌声 (裏:政宗、家康、信長)
■信長 選択
天主から張り出された板を歩くと、床の軋む音が闇夜に響いた
部屋にある明かりと、月明かりこの二つが夜の静寂を示すように存在する
軽く上を見上げ「やはりな」と呟くとその名を呼んだ
「鈴」
と、と、とぉん…
そんな音を立て、猫が信長の前に舞い降りてくる
「お前は、誰が主かよく解っているようだな」
ふんっと、鼻で笑うと部屋へ戻っていく
鈴もまた、その後を追うように付いて歩く
湖が、鈴になったのは酒の席
もう一曲歌わせようかと考えていたところに、政宗のつまみが運ばれてきた
そこにあったのは、鰹節
信長の好物であったが、自分が手をつける前に鈴が現れそれを食べた
腹立たしい猫とは思ったが、あまりに美味しそうに食べる姿にそのまま放っておいた
「あぁ、湖のやつ」
秀吉が、呆れるようにため息をついていた
鰹節に満足したのか、その場を出て行こうとする猫相手に武将達は一騒動
人相手では敵う相手は居ないだろう彼らを、猫はスルスルとその手を避け駆け出てしまった
秀吉はひどく心配をしていたが、信長には鈴が好んでいる場所に検討がつく
「好きにさせておけ」そう言い、酒の席が終わった
鈴が好むのは、この天主の屋根上、水の反射、三成の部屋に積まれた本の上
この時間であれば屋根上であろうと、部屋に戻りついでに鈴に声をかけたのだった
「俺の飯を横取りしおって…」
にゃあんっ
返事をするように、座った信長の胡座に収まるように鈴が上がってくる
「この罰はどうしてやろうか?」
ニヤリと不敵な笑みをうかべ、鈴の体を撫でてやったが二度目はそのまま尻尾を掴むとぎゅっと力を入れた
っにゃぁ!
驚いた鈴の声と同時に、錫色の小さな体から、栗色の髪に白い肌の女へと姿が変わる