第22章 心から
ぐしゃぐしゃと髪が乱され
りんりんと、髪飾りの鈴がそのたびに鳴った
「ひゃぁっ、ひ・・秀吉さん??」
「確かに、跳ねっ返りだな…まさか飛ぶとは思わなかったぞ」
くくっと愉快そうに笑う光秀も側に来る
「あんた…なにしてるの…」
「…此処を飛んだの…ですか…」
刀を腰に収めながら家康と三成は疲れたように眉をひそませた
「え…帰る…??」
なぜか湖だけがわけ解らず立ち尽くす
「そうだ。安土城に戻る」
そんな湖に政宗が声をかけた
「政宗…?」
「そんな顔するな、せっかく城から出られて声も出たのに」
「え…」
思考が追いつかない
政宗の手紙には、織田の傘下を抜けると書いてあった
でも今、みんなで城に帰るという
「悪く思うな、少々仕組ませてもらった」
そう言いながら光秀が肩をポンと叩き信長達の方へ歩き出す
その先には馬が四頭いる
「みつ、ひで…さん…?」
「悪い…湖。気乗りはしなかったんだが、他に策も無くてな…」
未だに手を頭に置いている秀吉は、悪いと苦笑している
「…勝負は止められたから…」
「…さようでございますね…ですが、この勝負…続けば、家康様が勝っていたと思います」
「当然でしょ…」
「はい、やはりさすがです。家康様は」
「…三成に褒められても癪なだけだ…」
「家康、お前はどうして素直に…」
家康と三成の終わらない会話に、秀吉が終止符を打つように声を上げる
いつもの風景
(え…なに…仕組んだ…?気乗りしなかった…)
だんだん状況を察したように、湖の表情が変わっていく
「…湖、帰るぞ」
信長がそんな湖に再び声を掛けた
「っ~~!帰るぞっじゃないですよ!!!もうっ、本当に本当に心配したんですよっ!」
びしっと信長に向かって指をさせば、信長はぴくりと眉を動かす
その指を丸めるように秀吉が押さえた
「こら、湖!信長様に何指をさしてるんだ!?」
そんな秀吉をキッと睨むと、一瞬秀吉もぎくりと身を固めた
ボロボロと大きな粒の涙を零しながら怒っているのだ
「ひどいですっ!人が、どれだけっ…っ!」