第22章 心から
お互いに向かって切り込んだ瞬間
今まで光りの下に居たはずが、鋭い蹄の音と共に暗い影がかかる
「「!?」」
視線を少し上げるも、身体は止まらない
一瞬の視界に入ったのは、茶色い馬の身体
それが、家康と三成の間に落ちてくるのだ
「「っ…」」
二人は刀を止めようとするものの勢いついた身体はそう簡単には止まらない
ッ…キ・・ン…ッ!!!
横から二本の刀が家康と三成の刀を払うと、その身体を押し間合い開けた
「本当に飛びやがった…」
政宗は目を見開き、その光景に笑いが込み上げる
ッガ…ッ!!!パッカ、パッカ…ブルル、ヒヒーンッ
降り立った馬は鼻息を上げ、足踏みを荒くする
「貴様は…思いもよらぬ事をする…」
信長は一つ息を零すと、口角を上げた
ふわりと舞った髪がその腰に落ち着くまで、まるで時がゆっくり進むかのように目に焼き付いた
二人の刀を止めた秀吉と光秀は刀を収め、馬にのった湖を見上げた
「なんて…心臓に悪いことするんだ…」
「お前は本当に面白い」
湖は馬を降りると、三成と家康の方に走り出す
転びそうになりながら、二人に駆け寄ると息を上げながら顔を上げた
『…ッ…』
口を開き、息を吸い…
「や…っ」
今までしなかった声が一音だけ聞える
「…っ、…いや、だよっ!!」
久しぶりに聞えた声は、震えていた
睨むように三成と家康を見る湖が必死に声を上げる
「絶対、やだからッ…!!」
潤んだ瞳で二人を睨むのだ
拳を握り閉めて
「あんた…」
「湖さ、ま…」
家康と三成は、そんな湖の姿を見て綺麗だと思った
必死にその場に立つ姿が綺麗だなんて
ぱんぱん…
誰もが黙った場に手をうつ音が聞えた
信長だ
「終いだ、帰るぞ」
くくくっと実に面白そうに笑いながら
そんな信長の様子に、湖は「え…」と言葉を失う
振り返れば、政宗と信長が並んで何事も無かったかの用にため息をついているのだ
がしっ…!
そんな湖の頭に力強く手が乗った
「このっ…跳ねっ返り!…どうかしてるだろう!?」