第22章 心から
光秀が、「全く…想定外な事を考える…」と真顔で秀吉を見ないままにそう言えば
「冗談だろ…」
秀吉は顔色を悪くした
信長は後ろに控える二人の気配が変わるのに気づく
湖の居た場所を見れば、さっきまで下を眺めていたはずの姿がない
(…そうか…全く面白い娘だ)
フッと口角を上げるとこれから起るであろう事を想定する
向かいの道を見上げる信長に政宗も気づいた
湖とは目を合わせない
その予定だったはずの信長が見上げている
(どうした…?)
向かいの道を見れば、湖の姿が見当たらない
(…まさか…)
こちらも嫌な予感しかしない
(声が出ないっ、気づいてもらえない…っ、ここから回っている暇も無いっ)
湖は馬を後ろに下がらせる
さっき見た場所
こちらの方が上になっている
幅は、助走をつければ飛べない距離ではない…この子なら
乗ってきた馬は、足の強い子だった
何度か走らせ乗り慣れている子だ
馬も湖を信頼している
『良い子…大丈夫、あなたなら飛べるから』
馬のたてがみを撫でるとその首を軽く抱きしめる
(…家康と三成くんが斬り合うなんて見たくないっ、政宗と家康が安土から居なくなるなんて考えたくないっ…絶対嫌っ)
「っ光秀」
政宗が振り返って光秀を見れば「お前はそこに居ろ」と姿を見せる光秀と秀吉
家康の振り下ろされた刀を三成は、分析しながら払っていく
(記録の刀の振りとはまた違う…家康様は日々の鍛錬でどんどん上に行かれている…)
(…三成のやつ、だんだん見切ってきた…こいつの見極めの早さ…だから嫌いなんだ…)
今までより鋭く斬り込んできた太刀を、三成はわずかに後ろに下がり、かろうじて受け止める
「手ぬるい反応してたら怪我するから、せいぜい気をつけろ」
「わかっています」
何度も刀を払いながら、三成は観察し分析していくそして…
刀を弾き体制を崩した家康に、三成はすかさず踏み込み喉元に狙いをすます
家康は体をねじるようにして避け、三成の突きをかわす
「今のは決まったと思ったのですが・・・やっぱりさすがですね、家康様は」
間合いを取ると、三成が淡々と言った
「…本当に嫌な相手だよ、お前は」