• テキストサイズ

【イケメン戦国】私と猫と

第22章 心から


ぴぃー、ぴーっ

空を高く飛ぶ鷹が鳴いた

一気に空気が変わる
張詰めたぴりぴりとした空間
どちらともなく刀が振られた



湖は、馬を走らせていた
狭い山道

(この道だよね)

途中途中で木々に積もった雪が音をたてて落ちてきた
羽織も羽織らずにきた
吐く息が白くなるが、寒くは感じない

道幅は馬がすれ違えるくらいはある直線が続き曲がりがある
そんな道を上がっていけば、キンッキンっと聞き覚えのある音がした

ざわっと心が騒ぐ

(…ッ、政宗、家康…!!)

急ぎ多い茂った木を抜ければ、そこは視界に遮るものが無い場所だった
雪が光りに反射し、一瞬目が霞む
一度目を細めた湖は、音のする方に顔を向け

(信長さまに…三成くんっ!)

見下ろした先で、三成と家康が対峙し斬り合っているのを見つけた
その後ろに行方を見守るように政宗と信長の姿がある
だが、そこは湖の居る場所とは崖を挟んで向かい側

「湖が来ました。思っていたより早いな…」

信長の後ろから秀吉の声が聞える

「解った。貴様らは湖を見てろ」

信長は決して湖を見ないように小声で答える
政宗にも光秀が伝え、三成と家康以外は湖の存在を認識した

「…三成、仕留めろ」

そう信長が声を掛ける
「仕留めろ」と言うのは合図だ
湖が来たぞと知らせるためにあらかじめ決めていた
それで二人もその存在を知ることにはなるが、手は緩めない

湖の声が掛かるまでは、真剣勝負

「はっ」
「…させるか…」

キン、キッ…ガッ…

山間での刀のぶつかり合い、その音は木霊するかのように響いた
上から見下ろす湖は、馬から飛び降り崖を覗くように口を開く
叫んでいるように見えるが、その声が聞えない

「…無理か」
「まぁ…待て」

痛みを受けているような表情、泣きそうなのに泣かないように必死に努めている

(…そうだ。湖はそうゆう子だ…他人の為に必死になる…今だって、二人を止めようと必死だ)

湖を見守りながら秀吉は拳を握る
だが、そんな湖が立ち上がったのを見ると思わず飛び出しそうになる
立ち上がって馬に乗ったのだ

「…あいつ…何する気だ…」
「…秀吉…いつでも出られるようにしておけ」
/ 1197ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp