第22章 心から
光秀の企みはこうだ
まず取りかかりとして湖には、家康と三成の異変を見せる
そして、政宗と家康が傘下を抜けると知らせ
湖にその後を追わせ、外に出るよう仕向ける
信長と対峙する緊迫した場面に湖を立ち会わせようというのだ
此処までは、光秀の思案通り順調だった
この後、湖が示した道を辿れば、信長達四人の居る道とは崖を挟んで向かい合った場所にでる
声は届くが、跨げないような場所だ
より緊迫感をまさせる為に、家康と三成には真剣での勝負を見せることにした
ここから湖が声を出して家康と三成の斬り合いを叫んで止める事を想定していたのだ
秀吉と光秀は馬を走らせ、信長達と待ち合わせた場所に到着した
「貴様らが来たと言うことは、湖は城を出たか」
「はい…ひとまずは」
信長の問いに秀吉が答えた
それを聞いていた三成が息をつく
「いいのでしょうか…確かに出られたとしても、これではかえって湖様を不安にさせるのでは…」
「…不本意だけど、同意見…」
家康も乗らない顔を見せるが、その背中を政宗に叩かれる
「荒治療だ。このまま怖がってばかりより良いだろう」
「先の両件、一気に片付けようとするとこうなっただけだ…現にお前達、今意見が合致していたな」
にやにやと笑う光秀に、家康が「…不本意と言ったでしょ」と小さく言う
「まぁ、たまには良かろう。このような芝居も」
「俺と光秀は念のため隠れて見守ります」
六人は予定していた場所へと向かう
そこは、崖を挟んで向かい合う道からよく見える場所だ
こちらからその道を確認するには、見上げるようになる
山の傾斜を利用したこの場所は、道というより景色を眺めるような少し広さのある場所だ
薄ら積もった雪が山に化粧を施すが
昨日今日と良く晴れ道に積もった雪は無くなっている
馬を走らせても支障はない
今朝早く湖が通る道も確認済みだった
「空が高いな…」
政宗がぽつりと零す
「政宗、そろそろだぞ」
見えない所から秀吉の声がかかる
「解っているが、準備をするのは俺じゃ無い」
そう言うと、馬から下りて向かい合う二人を見た
刀に手を掛けた二人はお互いを見合う
「真剣でも手加減はしないから」
「よろしくお願いいたします」
そう言うとお互い刀を構えた