第22章 心から
「湖様、これを急ぎ渡すように預かりました」
ぺこりとお辞儀し、部屋に戻って文を開ければ、そこには政宗の文字が書いてある
湖にもわかりやすいように書いてくれている手紙
『黙っておくわけにはいかないので伝える。直前ですまないな。俺と家康は織田家傘下から外れる。直接言えずに悪いな。恐らく追っ手が掛かる…信長様直々かも知れない』
政宗の文に湖の手が震え出す
思いもしていない事だった
(傘下を外れる…って、一体どういう…)
どうしてなのかは解らないが、敵対する関係になるかもしれないと言うことは解る
(昨日の…三成くんと家康の言い合い…あれって…っ)
顔を青ざめ続きを読めば、出て行く道順を示す文面があった
そして、付いてくるなら辿ってこいとも
(嘘…本当に…じゃあ、信長様達が居ないのは…政宗と家康を追ってるって事…)
裏切りという文字が頭に浮かぶ
もしそうなら、この時代どうなる?
(成敗…とか…)
ざわっと背筋が寒くなる
衣装箱から袴を取り出し急ぎ着替え
そして、手紙を懐に終い部屋を飛びだした
(そんなの…絶対にやだっ…)
草履を履くと門を抜け石段を駆け下り、厩舎まで走る
「っ、湖様!?」
厩舎にいた顔見知りの世話役が、ひどく慌てた様子の湖に驚いたが、尋ねる間もなく湖が馬に跨がり走り出したので彼は慌てて秀吉の御殿へと駆け込む
それをすべて見ていた秀吉は、慌てる世話役に「解ってる」と一言だけ掛け、ゆっくりと馬に跨がり湖と同じ方向へと駆けていった
そんな秀吉の隣に別の馬が着く
「先ずは一つ突破したな」
「…こんなやり方、俺は気が進まない」
「そう言うな、湖が怖がらずに外に出たんだ。喜ばしいだろう?」
「別の意味で怖がってるだろ…」
「まぁ…後で文句は言われるだろうがな」
苦笑する光秀と秀吉は、湖とは別の道で目的地まで向かった
「湖の手紙に示した道だと到着まで少し時間がかかる。その前に信長様達と合流だ」
「解っている」
馬は、ひんっと軽く鳴くと軽快に道を駆けていった