第22章 心から
安土城は朝から宴で賑わい、その影響は城下にも出たように今日は町も賑わっているように見える
平らげられた皿を下女達が嬉しそうに下げていく
湖も、その手伝いをしようとするがやんわりと彼女たちに止められるのだ
(…そうだね…いつまでもビクビク出来ないよね…もう終わったんだもの)
皆が祝ってくれている
そんな自分がいつまでも外に出られずに居られない
ちゃんと元気になったと言えるように、玄関なんかで止まってられないのだ
外に出て、声を出して、みんなに「ありがとう」と伝えないと…
湖は、そう思って回りを見ている
そんな湖を見ながら、信長は満足そうに笑っていた
そして、光秀は…「準備はいいな」と家康と三成の方を見てにやりと笑ったのだ
朝から始まった宴は、日が暮れるまで続き
ようやく静まったのは月が真上に上がる頃だった
女中に案内され、広間からそのまま湯殿へ向かった湖は、まだ耳に残る賑やかな声に微笑みながら身体を温めた
だが笑みは続かなかった
部屋までの通路で知っている声が言い合いをしているのだ
何を話しているかまでは聞えないが口調が激しい
(み・・三成くんと、家康…)
怒鳴りあいではないが、あきらかに何時もの雰囲気とは異なる
心配でその通路に顔を覗かせれば二人とも湖に気づき気まずそうな表情になる
(…何?)
湖は、その空気に「どうしたの」と理由を尋ねたいが…声がでない
三成の袖を引いて尋ねても、彼は苦笑してみせ「心配いりませんよ」と言うのだ
家康も目が合っても「…なんでもない」とすぐにその目をそらす
(何を言い合ってたの…なんだか、すごく空気が重い…いったい何をもめてたの?)
二人はそこで別れ、湖は三成に部屋まで送られた
再度、三成にさきほどの事を聞くが、彼は苦笑し「おやすみなさいませ」と言い襖を閉めてしまった
(三成くん、家康…)
締められた襖に、自分は蚊帳の外なのだと言われたように感じた
その日、湖はなかなか眠れずにすごした湖
次の日の朝、女中に起こされる前に支度を終え二人の姿を探した
ところが、その二人は見つからず
他に信長達の姿まで見えないのだ
(…みんな何処に行ったのかな…)
仕方なしに自室に戻ろうとすれば、家臣に文を渡される