第1章 タイムスリップ
小鳥の声に、草の臭い
光は温かくぽかぽか
(すごく気持ちいい…)
「おい、こいつじゃないか?」
「…みたいですね。こんな色の猫、見たことないですから…」
「本当に猫なのか?警戒心無さすぎじゃないか…」
ユラユラと不定期な揺れに、気持ちのいい温もり
「政宗、見つけかた?」
「ああ、恐らくコイツだろ…」
(人の手…?)
お腹に人の手の温もりを感じ、うっすら目を開けると
ユラユラ揺れた鈴の尻尾と手足が目にはいる
(まだ夢かぁ…)
「お?起きたか?」
声のほうに顔を向けると、眼帯をした男が自分の喉を撫でた
気持ちのよさにゴロゴロと喉をならし指にすり寄る
「人懐っこいな、飼い猫かもな」
「変わった目だな…南蛮の種かも知れないな…」
手渡された先には、観察するように自分をみる男がいた
「信長様が興味を引くのは、この毛色と目かもな…」
(うるさいなぁ…寝たいのに…)
再び目を閉じようとすると、ワンっ!という犬の声に体が反応し
目の前の男の着物に引っ付いた
「犬が怖いのか?」
犬は尻尾をふってついてくる
「秀吉は犬にもモテたか」
隣についていた政宗と呼ばれ男が笑っている
(…!犬なんて怖くない!鈴が怖がってる?!)
猫の体は固まったように秀吉の着物に張り付いていたが 、二度目の鳴き声と共に着物を引く重さが変わった
「ん?っ…!?」
見ると自分にしがみつくのは、裸体の女子
「は?」
見ていた政宗もぎょっとして止まった
「政宗さん、秀吉さん…どうか…!」
後ろから着いてきていたもう一人も横に並ぶと、二人同様言葉を失った
「え?」
湖は、顔を上げて男たちと景色をみる
(…夢)
ギュっと頬をつねっても痛いだけで夢から覚めない
「…夢じゃない?じゃあ…」
視線を下げれば
「っ?!いっ、ひぁっ!」
急いで身を隠すように縮こまると、馬から落ちそうになり
秀吉は湖を支えると、急ぎ羽織で身を隠した
「な、お前…なんだ…」
少し頬を染めつつも、不振な目をし
でも湖を落とさぬよう抱える
「もののけか…はじめて見たぞ…」
「もののけじゃない!!」
昨夜からの、もののけ扱いに湖はムッとし言い返した
「もののけじゃなきゃ鬼か…」
(鬼ですって?!失礼じゃない)