第22章 心から
「なんだ?」
「両件…って…」
家康が、まさかと口を開けば
「決まっている。湖の件と、ついでに貴様らの奇特な関係の改善だ」
この場で発言された「貴様ら」とは家康と三成の事だ
「幸い、急ぎの案件もない。誰かが、この城を不在にする前に、さっさとどうにかしておけ」
それだけ言うと、武将達は天主から追い出されるように出て行った
廊下を歩きながら政宗は笑った
「湖の事より、お前達の方が難易度高そうだ」
「冗談じゃ無い…」
「これまで以上に親密度を増せ…という事でしょうか?家康様、どうしましょうか」
「三成…まずは、湖が先だ」
歩きながら笑ったり、ため息を付いたりして歩く武将たち
その打ちの一人が足を止める
「…一度に試してみるか」
ぴたりと足を止める彼ら
「光秀、何か案があるのか?」
「ああ、つまらん芝居になるがな」
光秀がにやにやと笑うのに、家康は背筋が寒くなった
そのまま彼らは部屋に集まり、顔を合わせると光秀の案を聞く
家康は「面倒くさい」と言い、三成は「私に出来ることならなんでも」と意欲を見せる
「それは…」
秀吉が政宗を見れば、その意図に気づいたように政宗は
「丁度良い。退屈しのぎになる」
と、最近どこかで聞いた言葉をまた言うのだ
それに秀吉はかるくため息を付く
「そうだな…湖の事だ。きっと必死になってくれるはずだ」
「湖はともかく…俺は、三成と親睦を深めるなんてできませんから…」
そんな秀吉に、家康がため息を零しながら意見すると、横から三成の声がした
「…私は本気でやらせていただきます。家康様の胸をお借りできる機会…光栄です」
三成は、秀吉の言葉を聞くとその場を立ち上がって出て行こうとする
「三成、何処に行くんだ?」
「書庫にて剣術仕合の記録を確認して参ります」
そう言うと、部屋を出て行った
「おぉ、三成…本気になったようだな」
「…」
すっと立ち上がる家康を政宗が目で追う
「…なんですか」
「稽古場に行くんだろ?」
「…別に…三成とはきちんと勝負をつけるのも悪くないと思っただけです」
そんな家康が出て行くのを政宗は愉快そうに笑いながら立ち上がった
そして秀吉を見て
「どうやらあの件は、これでちゃらになりそうだな」
と笑うのだ