第22章 心から
「…診察は定期的にするけど、着替えたら好きに動きなよ…ただし、足の怪我もあるから…自分で考えて」
緩んだ手の力に、湖は「いまだ」と勢いよく家康を抱きしめた
(ありがとうっ、家康)
「っ…、だから…いいって…湖、手を…っ」
シュッと、襖が開く音が新たな往来を知らせてくれる
「なんだぁ…元気そうだな、湖」
「…家康、耳が赤いぞ」
政宗と光秀だ
二人とも、湖が抱きつき、家康が両手の行方を困らせている様を見て目を丸くし笑いながら入ってきた
二人が入ってくると、湖は家康から手を離す
「…寒いからです」
家康は、光秀の質問に「寒いから」と答え着物を整えるように手を動かす
政宗達は信長と反対方向に座り、湖は褥に座った状態で両側に武将二人ずつに見舞いされている
「目覚めたと聞いてきたが、調子はどうだ?」
政宗の問いに頷きにこりと笑えば、
「…湖、声が出ないのか?」
と光秀が続く
湖はそれにも頷いた、少しだけ複雑そうな笑みで
「…そうか」
「家康、毒のせいではないのだろう?」
「そうですね…湖も解っていると思いますが、精神的なものだと思います」
家康の答えに二人とも真顔で「あぁ」と返していた
湖も理解はしていた
雪空を見上げたとき、出そうと思って口を開けたのに出ない声
何度か試しても空気の通る音だけだった
覚えがある
だから慌てなかった
一時的なもので、すぐに出せるようになったが、過去にも声が出せなくなったことがあった