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【イケメン戦国】私と猫と

第21章 一線を越えた男


みっともなく泣きはらした私の記憶は、秀吉さんが抱きしめてくれた所までで途絶えた

目を開ければ、辺りは薄暗かった
そして音が無い

(…静か…)

身体はぽかぽか温かい、でも頬がひんやりと冷たい
片手を夜着から出せば、空気が冷たいのだと感じる

(私の部屋…)

枕元に桶、湯飲み、薬のようなもの
少し離れた所に火鉢

パチッ

炭の音が聞える

(私…どうし…たんだっけ…)

身体を横にし、手をつきてその身を起こせばずいぶんと痛みが走る
起き上がるのが辛い
でも、これは怪我とかじゃ無い…そう思いながら、身を起こせば
部屋から見える外の色が、ただ暗いだけではないようだった
どうにか起き上がって、ゆっくり歩こうとすれば、自分の右足が少し腫れているのが解る

(…怪我…したんだ…)

巻かれている包帯で様子はわからないけど、捻ったり等はしていないようだ
痛む部分に体重を乗せなければ歩ける

襖に手を掛け開けば…

(…雪…)

庭にふわふわとした雪が積もっている
庭の木も白い帽子を被ったようになっている
ふわふわと軽い雪が降り、周りの音を吸収しているようだった

(空まで…白い…)

寝衣のまま、裸足で庭に降りればその冷たさが伝わってくる
真っ白に綺麗な庭に、湖の足跡が三つ、五つ…七つ…小さな歩幅でつけば
その場に立ち止まった湖は少し口を開けると、空を見たまま止まった

(…あぁ…そうか…)

目を瞑って、気を失う直前の事を思い出す

(…私は…)

「っ…湖様!?」

そんな声に気づき部屋の方を見れば、様子を見に来たのか馴染みの女中が桶を放り投げ庭に降りてくる
駆け寄って湖を抱きしめ震える声で「良かった」とそう言った
そして、慌てるように湖を部屋へと連れ戻すと頭に積もった雪を払い、足を拭くと、敷いてあった褥へと連れていく

「気づかれてよろしかったです…っ、本当に…」

褥に座って女中の方を向くと、にこりと微笑み少し距離を取った彼女に手を伸ばしその身体を抱きしめた
抱きしめ返してくれる彼女の温もりは、火鉢や夜着よりも温かい

「湖様…っ」

彼女も湖を抱きしめた
だが、すぐに違和感を感じ、少し身体を離す

「…湖様…?」
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