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【イケメン戦国】私と猫と

第21章 一線を越えた男


広げられた胸元に顔を埋め、湖の身体を嗅ぐように鎖骨あたりに鼻を寄せた大山は

「良い香りがします・・・これで男を惑わせるんですかぃ・・・だが、私は違う。私の心を埋めてくれるのは、姫様の死に顔です」

ははっと男のから笑いが洞窟にこだましている
がちがちと、歯が当たって音を立て始めた湖
目の前の男の顔すら、もう涙でぼやけて見えない
すっと、一瞬冷たい物が擦った感触
同時に、少しの痛み

「っ・・ぅ…」

ぴりりとした痛みを感じれば、温かな液体が自分の胸元に伝わったのを感じる

鎖骨の少し下の位置横一線に血が浮かび細い血筋が下に向かって流れたのだ
ビクリと身を固め動かなくなった湖の血筋を一舐めすると、彼は犬たちを止めている縄に近づく
縄に繋がれた一頭の犬が、うなり声とよだれを垂らし湖だけを見ていた

「では、姫様。さようなら」
「い、やめ・・・っ」

絞り出た声と共に、男の小刀が縄を切ろうと振り落とされた

(や・・・っ「   」、鈴・・・っ)

ぶつり 

そんな音を立てると同時に犬が地を蹴る音がする
ぎゅうと目を閉じていると、すぐに犬の鳴く声が聞えた

ドンッという銃声と共に・・・

だが、恐ろしくて目が開けられないで居ると聞き慣れた声が聞える

「湖っ」

(っ・・・?!)

目を開ければ、自分の涙でゆがむ景色の中で三人の人影が見える

(っ・・・)

「ぅ…んっ・・」
「な、なぜ・・・っ?!」

ぽたんと、大粒の涙が落ちた

キン、がっ・・・

刀のぶつかる音、何か物がぶつかる音がする

(まさ、むね・・・ひでよ、しさん・・っ)

溢れる涙が止まらない
すさまじく動く心臓が、まだ生きている事を教えてくれる

「生きてるな、湖」

(みつひでさん・・・っ)

男を政宗が拘束すれば、秀吉が湖の杭から手ぐさりを外す

「よし・・頑張った、湖」

倒れ込む身体を受け止めると、湖に伝わってくる安心出来る匂いと体温

「ぅ・・ぁ・・・んん、ひで、よしさん・・・!」
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