第21章 一線を越えた男
ざり、ざり…
暗闇に揺れる灯
その中を動く二つの影
「こんな息子でも可愛いようでね、私を庇って罪を被った父はあの間抜けな商家の浪人に殺された」
「毒じゃ・・ないんですか・・・」
未だ前に前にと押され躓きならがも歩く湖の足もとに草履はない
どこで落ちたのかも解らない
さっきから石が突き刺さるが、痛みよりこの男に対する恐怖が勝って、自分の足袋に血が滲んでる事にも気づいていない
(一体・・何処まで行くの・・・)
やがて聞き覚えのある鳴き声が聞え始める
「あぁ・・・もう一週間ほど食わせてないからな・・・」
(犬・・・)
「さて、あぁ。父親ね、表向きは毒による病死にしたよ。浪人に殺されたなんて縁起が悪いだろぅ?だが、面白かった・・・最高に震えたよ。目の前で斬られて死んでいく父親を見た時に、ぞくぞくしたんだ・・・初めて満足感を覚えたよ」
バランスを崩した湖は、そこで膝を付いてしまう
すると拘束した紐をまた持ち上げるように、立てと大山が急かす
(・・・足が・・・)
足もとを見れば、どこか切れているのか片足の足袋が真っ赤に染まり地面に血の跡が続いているようだった
(・・・大丈夫・・・きっと、私が攫われたことに気づいている・・・)
ぎゅうと目を瞑って、自分に暗示を掛けるように何度もそう思っていれば
「いつまでも休憩していられないんだ。万一・・・って事もあるからねぇ・・・さっさと立て、姫様」
湖は、言われた通りに立ち上がるとわざと怪我をした足を擦るように歩きだした
目印になるように
「何・・・?あぁ、怪我をされましたか?申し訳ありません・・ね?」
「心にも無い言葉はいりません・・・話の続きを聞かせて下さい・・・」
震える声をどうにか抑えそう言えば、大山は「実に愉快だ」と笑い出す
「いいですよ、こんな話の先を聞きだがるなんて・・・やはり織田の血筋は野蛮ですねぇ」
アハハと、男の声が長い通路に響いた
「・・・私は、またあれを見たくなったのですよ。だから、浪人を炊きたてた・・・詫びと同情、親切そんなくだらない顔を見せてやれば、彼はころりと手の中に落ちてきた。だから彼に言った・・・手を掛けたのは、お国の大名でしょう?復讐しましょう・・・ってね?」
「・・・飴売りは、あなたですか・・・」