第21章 一線を越えた男
すると、別の蹄の音が聞えてきて乗っていた人物がするりと足をつく
「手に入れては無いのか?」
信長だ
「申し訳ありません。なにぶん、倉の内側にある隠し扉を開けるには少々頭を捻りまして・・・」
「・・・すぐに、城の者が来る。指示は貴様が出せ、宗久」
「かしこまりました」
三成と信長は、店に上がると慌てふためく奉公人を余所に倉へと向かっていく
店の中では奉公人が、外では町人が、何事かとざわつく中
パンパンッ!
と、手を打つ音に人々が驚いた
「すみませんね、皆様。今からこの店で調べたい事がありますので、関係の無い方は離れていてくださいね」
宗久はそう言い、彼もまた店へと入っていった
倉に着いた信長と三成は、既に壊された表の鍵を見ると中に入る
中は金、書物・・・と一般的なものばかり置かれているが、一点だけ広く取られた場所があった
「ここの床下でしょうか・・・」
「宗久が言っていた隠し扉か?」
板張りの床
其処だけは何も置かれず、確かに入り口のような切れ込みがあるが取っ手がない
隙間に刀を差し込んでも上がりも下がりもしない様子だ
三成がその床を叩けば、木の音以外に鈍い音がする
「・・・鉄か・・」
「そのようですね、木ならばこじ開けることは可能でしょうが・・・下手に破壊すれば、大がかりに壊さないといけなくなりますね・・・」
「三成」
「・・・少しだけお待ちください・・・」
四角く切り込みの入った床面をトントンと叩いていけば、小さな正方形の板をめくった
外れた板の下から見えるのは、一回り小さな正方形
だが、それは5つのブロックに分かれて作られていた
溝に指を掛ければ、上に持ち上がるようだ
(・・・鍵ですね・・・)
ぐっと指に力を入れ、それを持ち上げれば拳ほどの高さまで引き出すことが出来る
同時に、カッという何かがずれる音がする
(・・・からくり仕掛け・・・普段であれば、じっくり拝見したいところですが・・・今はそうも言っていられませんからね)
表面の5つの切り込み、側面にも何層か動かせそうな切り込みがある
外に立って中を見ている店の者に灯を頼むと、しゃがんでいる三成を見下ろすように信長が口を開く
「開けられるか」
「お任せ下さい」