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【イケメン戦国】私と猫と

第21章 一線を越えた男


鼻が曲がりそうな匂い
だが、知ってる匂いだ
それが酷い匂いになっているだけ

(これは・・・)

「おお・・大山さん・・・っ」

馬の振動と、上からの重みで苦しい中湖はどうにか声をだす

「・・・やはりもう正体が知れていましたか」

その男の声、これもやはり聞き覚えがある

(やっぱり、そうだ・・・あの人だ)

馬がもうスピードで掛ける
森の中なのか、枝の折れる音や葉を踏む音がした






「落ち着いて報告を」

三成が、慌てふためき報告がままならない家臣に声を掛けた

「も、申し訳ありませんっ・・・先ほど、姫様が秀吉様の御殿に行くと告げ門番とすれ違い、その後誰かの悲鳴を聞き駆けつけたそうなのですが・・・っ、姿が無く・・・蹄の音と、これが・・・っ」

家臣が震えた手で握り閉めていた物を差し出せば、政宗がそれを受け取り全員に見えるように手の平に乗せた
其処には、湖の髪飾りについている鈴が一つだけ乗っている

「湖のやつ・・・」
「あの馬鹿っ、一人で出歩くなって・・・っ、くそ!」

政宗と秀吉が立ち上がると、信長は指示を出す

「秀吉、政宗、光秀は、貴様らはこの地図の場所へ迎え。三成は、大山の店を。家康は、考えられる解毒剤を用意し待機」
「「「「「はっ」」」」」

立ち上がり各自急ぎ動き出す

「御館様はどうされます・・・」

光秀が横を見れば、信長は腰を上げている

「野暮用を済ませ、直ぐ追いつく」
「かしこまりました」

(狙いを手近な湖に変えたか・・・)

信長は腰に刀を差すと、天主を出て行く

日はまだ落ちない
落ち着かない胸の内を晒さないよう歩くが、やはりそうもいかない

「戻ったらしばらく綱でも繋ぐか・・・」

真っ赤になりながら怒る湖の顔が目に浮かぶ

(貴様・・・どれだけ・・・)

そんな思い浮かべた湖に文句を言いそうになりながら城からでた信長は無表情なまま愛馬に跨がり駆けていった


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