第21章 一線を越えた男
「お待たせいたしました」
「っお取り次ぎいただき、ありがとうございます」
「いえ、かまいません・・・ところで、飴売りの事を知っていると伺いましたが・・・」
「っはい。私、油問屋をしております大山と申します・・・とは、言いましても一年前に代替わりしたばかり新顔でございますが・・・」
待たせていた訪問者の待つ間に、三成が入ると
相手は堰を切ったかのように話はじめる
「大山殿ですね・・・用件にうつらせていただきたいのですが」
「はい、申し訳ありません・・・こちらの城へ参上した際、飴に毒が混入され姫様が倒れたと伺い・・・ちらりと頭を過ぎったのですが・・・」
言いずらそうに話し出す商人に三成が先を急がせる
「・・・おそらく、その飴売り。先代が潰した隣国の商人の家の者かと思われます」
「・・・潰した?」
「詳しくは、聞かされておりませんが・・・先代は亡くなるまでそのことにうなされておりました。その商家に出入りしていた浪人が復讐でその国の大名を殺したと・・・怯えておりました。私は、その時に事実を知りました・・・先代の父が、同じ油問屋のそこの荷を横流しし自分の荷物として品を売っていたことを…」
国違いだが、仕入れ先はおなじであった二つの商家
ある日、どうしても品が足りず荷運びに金を渡し、別の国に行くはずだった荷を自分の物にしてしまった
その際、特に何事も無かったのを良いことに何度もそうして油の金を掛けずに荷を横流ししていれば、隣国の油問屋が商品を着服している疑いを掛けられ、さほどしないうちに処罰されたと噂が耳に入った
まもなくして先代宛に手紙が届きはじめる
はじめてその手紙を受け取った際、先代は床に臥せったという
手紙は時折届くようになり、最後の手紙を先代が受け取ったときに初めて先代から事を聞かされたのだと、三成に話をした
すぐに使用人をその国に寄越して、潰れた商家の関係者を探したが、全員が処罰され、この時にはもう誰も居なかった
ただその浪人だけは、生き延びたと聞き、せめて詫びをしたくて探していたのだと
そして、半年ほど前に店にやってきた飴売りの男
話を聞けば、その商家の浪人を知っているようだったので、名前や居場所を尋ね、連絡を取って欲しいと願ったが拒否されてしまった