第21章 一線を越えた男
「山犬か?」
「犬には間違い無いが・・・山犬かは解らんな」
「・・・もしや、浪人が駆除したっていう野犬ってことか?」
「そもそも駆除したかどうかすら、誰も見ていないのだから証明しようがない・・・野犬が居なくなったという事実だけだからな」
光りの当たる場所に出てから立ち止まると、信長は「あの男について聞かせろ」と光秀に言う
「見つかったとは言っても、村人が見つけたわけではありません。こんな場所ですから・・・野犬の件を耳に入れてはらった使いの者が発見し、報告が入り確認に・・・まさか、信長様まで来られるとは思いませんでしたが・・・村人は、この男は浪人と共に旅に出たと思い込んでたようです」
浪人が、この骸の男をよく頼っていた事
この男が、急に大義の為に・・・と村人に口走り始めたことなど
光秀から報告を受け信長は息を着いた
「信長様、どうかされましたか?」
その様子に秀吉がすぐに気づき信長を気に掛ける
「いや・・・だが、腑に落ちん・・・その浪人と飴売りは同一人物として考えて良いが・・・何のために動いているのか解らん」
二国の大名、そのうち一国は浪人が奉公していた先の商を潰した国だ
その国の大名は、飴菓子が贈られ食してから様子が変わって自ら自害した
次は、その隣の国の大名
その商いとは何の関わりもないはずだ
一人はその国の家臣で、動物に食い殺され川に捨てられている
そして大名は、飴菓子の多量摂取で毒殺
両国共に、その息子が後を継いでいた
直轄領値ではないため、詳しいことは知らなかったが、今回の件でその詳細を知った
この事件から既に一年経過している
浪人が、この事件の犯人だとして
なぜ一年経過した今また動き出したのか?
誰を狙っているのか?
そもそもあの飴自体・・信長達を目的として作られたものなのか・・・
「確かに・・・その潰された商というのは、何を扱ってたんだ?」
ふとした疑問を秀吉が口に出せば、光秀が
「油だと、宗久殿が言ってたな・・・」
「油・・・か・・・」
(あの茶会、顔色を悪くしていたのは油扱いの商い屋だったな・・・なにか、関係あるかも知れんな・・・)
「城に戻る。光秀、お前も一緒に戻れ」
「「はっ」」