第21章 一線を越えた男
「湖様、この後、お時間ありますか?」
「うん、空いてるよ?」
(光秀さんにお礼がまだだけど・・・きっと光秀さんは、私が探しても会えないだろうし・・・)
近々会ったときにお礼をしようと湖は決め、三成に返答した
「よかった。では、少し散歩に付き合っていただけませんか?」
「え・・・」
(三成くん・・・この書簡読むんじゃ・・??)
湖が驚いた顔をしたので、三成は少し間を置き尋ねた
「ご迷惑、でしたでしょうか・・・」
「ううん、そうじゃないの。三成くんが散歩に誘ってくれるなんて、思わなくて・・・これから運んできた書簡を読むんじゃないのかな?って思って・・・」
そう言いながらも、湖は三成を見てにっこり笑うのだ
「すごく、嬉しい。ありがとう。ぜひ、行きたいな。ずっと部屋にいたから、散歩出来たら嬉しい」
花がほころぶように笑う湖に、三成の心が満たされていく
「それでは、今から外に・・・」
「三成様」
三成の言葉を、後ろから歩いてきた家臣の声が遮った
「はい。どうかしましたか?」
「あ・・・姫様とお話中でしたか。申し訳ございません」
「いいえ、お気にされずに」
「湖姫様、申し訳ありません・・・」
そう言いながらも言い淀む家臣に首を傾げていると、三成が「湖様、少し部屋で待っていていただけますか?」と湖を部屋に入れ襖を閉めた
何の話なのか、湖が居れば言いずらそうな雰囲気を悟って静かにしていれば、断片断片の言葉が耳に入る
「実は・・・飴売りの・・・今、来ているのですが・・・」
(飴売り・・・あ、あの飴のかな・・・)
あの毒が入った飴、秀吉の言う通りだった
「毒味もせずに食べるなんて・・」自分の不甲斐なさを反省する出来事だった
貰ったものをくすねて食べ毒に当たった
それなのに、みんな心配してくれ、家康は湖から完全に毒が抜けるまではと終始側にいてくれた
(迷惑掛けちゃった・・・な・・・)
湖が、考え事をしていればいつの間にか襖が開き三成が正面に屈んでいた
「湖様、顔色がすぐれません・・・もしや、お体が・・・」
「あ・・・」