第21章 一線を越えた男
飴を食べて10日
薬が変わり湖の体調は順調に改善し、傍から見ていても魘されることもなくなった
ただ念のためと言われ、家康の許可が出るまでの間
大人しく過ごしていた湖
自由に動いていいと許可が出たその日、真っ先向かったのは信長の部屋だ
「失礼します」
だが、返答がない
湖は、そうっと襖を開くがやはりその姿はない
「軍議?でも家康何も言ってなかったよね」
首を傾げながら、襖を閉じると湖は信長を探しに戻る
飴を持ってきた商人は城内の立ち入り禁止となっていた
そして、飴を商人に渡した男は今捜索中だと秀吉に聞いていた
城の出入りは厳重体制をとっているとも聞いた
だから、城内であれば湖は自由に動いて良いと、ただし城の外に出たい場合には飴売りが捕まるまでは誰かと一緒に行動するようにと言われていた
「秀吉さんとお仕事かな?」
「湖、家康の許可が出たのか?」
とことこと歩いていれば、後ろから声が掛かる
「あ、政宗。うん、もういいって」
へへっと、湖は緩く笑う
そんな彼女の頭にぽんと手を乗せると、政宗は「そうか」と目を細めるのだ
「信長さまに、挨拶に行こうと思ったんだけど・・・」
「あぁ。今日は秀吉と外に出てる。夕方には戻るぞ」
「そうなんだ。ありがと、政宗も・・・その、心配掛けてごめんね」
政宗は、湖の頭に乗せていた手を横に動かし始めた
「や、ちょ・・・政宗、ぐちゃぐちゃになるっ」
「なに謝ってんだか・・・」
ふぅとため息交じりで笑うと、政宗は用があるらしく「気をつけろよ」といい行ってしまった
「政宗、お仕事がんばってね」
湖は手を振って送れば、軽く振り向き笑い返す政宗がいた
「さてと・・・じゃあ、お城に残ってるのは、三成君と光秀さんか・・・いるかな?」
湖もまた其処を翻して、先に進む
そして、書庫で三成を見つけると・・・
「三成くん」
「湖様。もう大丈夫なのですか?」
湖は、駆け寄って三成の持っている巻物を少し持つと手伝うといい一緒に歩き出す
歩きながら、具合のことや心配を掛けた詫びなどしていればすぐに部屋に着いてしまう
巻物を置くと、湖は「じゃあ」と行って部屋を出ようとしたが・・・