• テキストサイズ

【イケメン戦国】私と猫と

第21章 一線を越えた男


「姫様にご入り用かと」

取り出しのは、一人分しかなかった幻覚解毒の薬草だ

「噂で毒に当たったと聞きまして・・・これは珍しいものですからね。よろしければ、お納めください」
「・・・どこまで知っているのか・・・何か、飴売りの件で解れば、知らせを寄越せ」

宗久は、一礼すると部屋から退出していった
残された薬草を手に取った光秀もまた部屋を出る

「家康なら、湖の部屋にいるはずだ」
「承知しました」



毒を摂取してから3日目の夕方
摂取した夜からずっと褥に寝たきりの湖ではあったが、2日目には家康が解毒薬を煎じて飲ませてもらい、ずいぶん身体が楽になっていた
寝衣の上に羽織を、そして夜着を膝に駆けお茶を飲む湖
その横に、文机で書簡をしたためている家康の姿がある

「それ飲んだら、横になって」
「・・・もう大丈夫だよ。熱もないし、吐き気や悪寒、痺れも家康が薬をつくってくれたおかげで、もう無いんだよ?」

ことりと、筆を置いた家康が湖を見てため息を付く

「何度も説明したけど、信長様とあんたでは解毒薬が違うと言ったよね?あんたには、悪いけ・・」
「悪くない」

続けようとした言葉を遮る湖は、にこりと笑って家康を見る

「珍しい薬草で、一人分しかない。当然、信長様を優先にして当たり前の事でしょ?それに、幻覚って言っても・・・そんな症状ないよ」
「あんたは知らないだろうけど・・・」

(寝ている間にうなされている・・・起きた湖は、覚えてないから解らないんだろうけど、きっと毒のせいだ・・・)

言葉を紡いだ家康を、湖はきょとんとした顔で見ていると、「入るぞ」と部屋の外から声が掛かる

「はい」

湖が、返事をすれば襖が開き、冷たい風と共に光秀が部屋に入ってきた
光秀は、湖が身を震わせたのに気づくと直ぐに襖を閉める
そして、家康の使っている文机に懐紙を置いた

「これは?」

家康は、包みを開けると

「・・・光秀さん、しばらくお願いします」
「あぁ」

それを懐にしまい込み、急ぎ足で部屋を出て行ってしまった
/ 1197ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp