第21章 一線を越えた男
邪魔になるかも、悪いかも・・そう思いつつも、一人になるのは心が不安で仕方ない
かといい、此処に残るわけにもいかないだろう
おそらくこれから信長達は、このことの対策等をするのだ
なら、此処に湖が居るわけにはいかない
湖は、秀吉の言葉に「うん」と小さく頷く
秀吉に支えながらも、湖は立ち上がった
そして、二人は一礼すると部屋から出て行こうとする
「・・・湖、様子は見に行くから。あいつの顔見るのは癪だけど…」
家康は、湖にそう言うと秀吉と共に部屋から去って行く後ろ姿を見つめていた
「・・・で、信長様・・・本当に症状はありませんか?」
「今のところはない・・・おそらく阿片だと思うのは変わらんが・・・だとすれば、たかがあれだけの量で死人がでるのが理解できん。なにか、別の毒物が入っているかもしれんな」
「そう思っているのに、どうして口に入れたんですか・・・」
家康は大きくため息を付いた
「・・・さあな・・・だが、飼い猫が歯にひっかっかた異物を取り除きたいと言ったなら、飼い主としては取ってやるしかあるまい。世話の焼ける猫ならなおさらな」
そう言い、手元にあった書簡に目を通し始めた信長
彼はこの日、本当に普段通りに過ごすのであった
家康は、この言葉に信長の湖に対する執着を再度感じていた
「・・・どうせ苛めついででしょう・・・」
「貴様は、どうしてそう責める・・・」
「さあ・・・どうしてでしょうね」
そして、家康もまた思いは一緒だ
湖への執着
彼女が城に来て、この冬を超せば一年ほどになる
いつのまにか、そして直ぐに誰もが彼女に興味を持ち執着する存在になっている