第21章 一線を越えた男
「湖?」
「たべ、た・・・あめ・・」
「「はぁ??」」
訳がわからないそんな二人の姿を見た信長が、湖を抱えたままで「そうだな」と表情を変えずに頷いた
「っ、「そうだな」じゃありませんよ!!少し目を離した隙に・・・何をされたんですか?!・・・どこか変わりはありませんか?!」
「・・・落ち着いてください。秀吉さん・・・信長様、摂取された量はどのくらいですか」
「舌先で溶けるだけだ。問題無い」
「問題有りです!!万一にも鴆毒などならどうされるんですか?!」
秀吉は顔を青ざめながら、二人の毒物摂取者に駆け寄る
「そんなものなら、湖が当に倒れているだろう・・・これはおおかた阿片だ」
「だとしても、解っていて摂取するなどっ・・」
秀吉が慌てる中、寄ってきた家康は、信長と湖の手を取り脈を探った
そして、信長には「問題ありません」とその手を離す
「あんたは・・・異常に体温低いけど…大方事実に臆されたってとこか…」
「た、ぶん…」
(具合の悪いところなど、無い。けど…)
湖は、毒物とは知らなかったものの
そうかも知れない物を自ら摂取してしまったんだという、今までの湖からすれば非日常的な現実に頭がついていかずにいた
家康の手が額に触れる
それで、自分が汗をかいていたことに気づいた
ぐいっと、家康が着物の袖でそれを拭うと
「命に別状はないし、万一にもそんな事にはさせないから心配しないで」
と、そう素っ気なさそうに言う
「念のため二人とも今日はもう横になってください」
湖は素直に頷くも、信長は別だ
「問題無い」
「・・・そう言うと思いました。では、今日は俺が側についています」
「・・・貴様の仕事があるだろう」
「問題ありません」
信長が先ほど答えた言葉と、どうようの言葉を選んで家康が帰せば、信長はどこか面白そうに「好きにするがいい」と返す
「湖、お前は・・・自室で休むか?」
秀吉を見る湖の瞳は不安そうに揺れている
そして、少しの間の後ふるふると頭を振った
「・・・そうだよな・・・俺は、今日は城を出る用がある・・・三成に伝えておく。三成の部屋で休むか?」