第21章 一線を越えた男
残りの割れた飴は、懐紙に包み懐に入れると湖は信長の居るであろう天主へと足を向けた
(でも、これくれた人・・・わからないよね・・・あんなに同時にたくさん貰ってしまって、特に名前が書かれているわけでもないし・・・)
「失礼します」
「湖か、入れ」
天主の襖の外から声を掛け、信長の許可を取った湖は襖を開け入ろうとすると・・・
すぐに聞えたのは秀吉の声だ
「まったく・・・毒味させて貰うと言ったはずです。これは回収させてもらいます」
そう言い、先ほど信長がくすねた金平糖の入った瓶を懐にしまったところだった
「まずい」そんな表情をした湖を横目で確認した秀吉は、続けて湖にも手を差し出す
「・・・まさかとは思うが・・・湖、お前も同様の事をしていないだろうな」
すこし怒ったようなその表情に、湖は言葉を飲みながら懐から取り出した箱を秀吉の手の平に乗せたのだ
すると、それを確認し秀吉は「はぁーー」とわざと大きな息を着く
その正面で舌打ちする信長
湖は苦笑しながらも「すみません」と謝った
「あ、でも、包みの中見ていただきたくって・・・すごく素敵なんです。兎の形の飴が入っていたんですよ。1匹割れちゃって・・・それは取り出したので、残り3匹だけなんですけど」
「・・・兎だと?」
それを聞いていた秀吉の表情が変わる
湖は、包みを開けてまずかったのかと「ごめんなさいっ」と謝るが、秀吉は構わず包みを開けて確認をした
そして、それを信長に見せる
「ほぉ・・・これが、例の飴か・・・確かに見事な仕上げだな」
「・・・今日来た商人の中の誰かが持ってきたものだな?湖、誰から貰った物かわかるか?」
二人の表情から、それがただの飴ではないことを感じ取った湖は、秀吉の返答の代わりに頭を振ってみせる
それから、不安な面持ちで聞くのだ
「飴・・・じゃないんですか?」
秀吉は、その表情に気づき「まさか」と顔色を変える
「さっき・・・割れた飴があるって言ってたな・・・お前・・・まさか、口にして・・」
「一欠片だけ、食べちゃいました」
「ばっ・・・!!」
秀吉が声を発するのを遮るように、信長が湖の側に寄ると湖の顎に指を掛け上を向かせた