第20章 私が猫で、猫が私 (裏:安土組全員)
私は口を閉ざした
なぜなら本来呼びたい名の人物が、安土に欠かせない方だから
もし彼が、私の為に側に残ったら
■信長:宣言「好き」■
皆の視線を感じながらも、湖はぐるぐると先ほどから自分の頭の中で悶絶し通しだ
(・・・主が不在な上、いつ帰れるかも解らない・・・秀吉さんの御殿での滞在すらされなかったのに・・・無理無理無理・・ぜったい、無理・・・でも、じゃあ誰の名前を出すの・・)
自分が求めるのは信長、ただ一人
だけど、彼は自分の物ではない、もちろんだ
だからといって、他の人と二人で過ごすのか・・
(できるけど・・・それってまるで、公開浮気しているようなものじゃ・・)
果たして彼は、それをどう思うのだろうか
「湖・・・?」
だんだん顔色の悪くなってくる湖に気づき、秀吉がその額に手を伸ばそうとすれば・・・
「お前の飼い主は誰だ」
そうはっきり声が聞え、湖はぴくりと身を跳ねさせた
「飼い主・・だと?おい、その言い方はないだろう」
信玄と幸村がその言葉に眉をしかめ、信長に向かって声を上げたのは信玄だった
「湖」
「私の主は・・・信長さま・・・です」
結局、信長は秀吉の苦言もものともせず、自分が留まることを決めた
ただし三日だけ
三日後には、誰かが迎えに来る予定だ
そもそもこんな話を敵側の人間が居る前ですべきではない
だが、信玄に謙信達にとっても湖は今や大切な存在だ
そんな彼女の今の状況を放置は出来ない
まずは、湖を元の状態に戻すことが先決である
誰も、互いに其処に触れることはなく密約が成される
湖が元の生活を送られるようになるまでは、互いに何もしないことを
だが、ここにいる人間の中で湖だけはそれを知らない
もともとこの時代の人間ではない彼女
さらに戦ごとに感が強いわけでもない
そんな内情など思いあたりはしないだろう
今、この場に残ったのは
湖と信長、そして彼の馬だけだ