第20章 私が猫で、猫が私 (裏:安土組全員)
ビクリと身を固めると、そんな湖の手を取り再び家の中へと入っていく家康
「家康・・・?」
繋がれた手は温かく、久しぶりに自分の身体で感じる家康の体温を嬉しく感じてしまう湖
そんな湖が無意識に家康の手を握り返せば、前を向いたままの家康の表情が緩んだ
居間につくと、庭が見える襖を閉じ湖の頭を覆っている羽織を外す家康
そうすれば、湖の頭上の耳がようやく解放されたかのようにピンと立つ
尻尾もおなじくゆるりとその場で揺れた
「・・・ごめんね」
また湖が申し訳なさそうに言う
家康の眉がぴくりと動いた
「それ、止めなよ」
「え?」
「・・・あんた、何かしたわけ」
不機嫌そうな表情に、湖は言い淀む
「だって・・・こんなんになって・・・家康指名したし・・・皆と一緒にお城に戻れないせいで、お仕事も溜まっちゃうだろうし・・・」
「その姿になったのは、不可抗力なんでしょ・・・それに、俺を指名しなかったら一体誰を指名する気だったのさ」
お互い立ったままで話をしていれば、湖は俯いたまま
おまけにその耳まで申し訳なさそうに伏せている
「・・・やっぱり、一人で大丈夫だよ・・家さえ貸してもらえれば、それで、もとに戻ったら」
「却下」
家康の顔を見れば、やはりいつもより表情が硬く不機嫌に見える
「此処をあんた一人に貸すわけには行かない」
「っ・・そうだよね、図々しくごめ」
「違う。そうじゃない・・・はぁ・・・此処にあんた一人で置いていけば、あいつが・・」
「あいつ・・・?」
「はぁー・・・ここの主。女好きが高じて、ここに隠れ屋作った馬鹿だ」
げんなりしたその表情に、湖は意味がわからず家康を見つめ返すだけ
(女好き・・高じて・・・なら、ここは・・・)
だんだん意味を理解する毎に染まり出す頬
「・・・そういう意味の家」
「家康・・も・・・?」
湖から出た言葉に、家康は先ほどより眉をひそめた
「あんた・・・俺がそんな事をすると」
「ごっめん・・・っ!!」
「・・・またそれだ・・・」
口を開けば、謝罪の言葉ばかりの湖
そうさせているのは自分の態度にも問題があるとはわかっていても、その謝罪が出る度に心に靄がかかる