第20章 私が猫で、猫が私 (裏:安土組全員)
私が選んだのは、じっとこちらを見たまま何も言わない彼
「家康・・・迷惑かな・・・」
「・・別に」
■家康:繋「求める者」■
先ほどから何も話そうとしない家康
話しかければ、「そうだね」「あんたの好きにすればいい」と答えてはくれているが・・・
(・・・気まずい・・・)
馬上で二人、湖を前に乗せその身体を支えるように後ろにのる家康
位置が位置だけに、その表情は確認できない
が、返事の仕方が
(不機嫌かも・・・)
「あの・・・」
「・・・なに」
「その・・・ごめんね・・・」
何を言って良いのか解らず、とりあえず謝ってみると・・・
後ろから深いため息が聞えた
それに湖は身を縮めるのだ
その後、湖は何を話して良いかも解らず気まずくなってしまう
家康もまた無言のまま、目的の場所へと移動していた
ついたのほど遠くない家だった
小さな家だが、手入れが行き届いている
人は住んでいないと言っていたが、掃除もされていてきれいだった
馬から降りると、家康は馬をつなぎに向かった
湖は、入り口から家をのぞき見た
(誰かの家なのかな・・・ずいぶん手入れされて居るみたいだけど・・・)
「なにしてるの・・・入って」
いつのまにか後ろに立っていた家康が、草履を脱ぎ先に家に入っていく
「あ・・・待って・・、えっと・・、おじゃまします」
湖もまたそんな家康の後をついて中に入った
やはり家は綺麗に掃除されている
通りがかった台所もいつでも使えるような状態だ
家康を追いかけて行けば、彼は物入れから紙と筆を出し文字を書き出した
「家康?」
(この家のこと・・・把握して居るみたい)
「・・・知り合いの家だから」
「え?」
「ここ。顔なじみの家・・・とは言っても、あの人は此処に住んでいるわけではないから、たまに俺も借りることもある。家は、近くの住人が清掃してくれてる」
湖が気になっているだろう事を家康は一息に教えてくれた
「そうなんだ・・・」
文を書き終えた家康は、玄関先に戻ると近くの木に文を結んだ
「・・・ここの主とのやりとり、お互いの滞在が被らないための連絡」
黙って自分を見ている湖に家康は再びため息を漏らす
「で、あんたはいつまでそんな顔してるの?」