第20章 私が猫で、猫が私 (裏:安土組全員)
「わぁ・・・っうん!きつねさま、すごくきれいっ!ねぇっだっこして・・・ほしいな」
「・・・政宗」
政宗の方を向けば、答えるように湖の身体を下に降ろしてくれる
「秘密にしていてくれるお礼ね」
幼児の目線に合わせてしゃがむと、湖はその子を抱きしめた
「きつねさま、いいにおいっ!ありがとー」
手を振ってさる女の子を湖はじっと見ていた
「・・・鈴と話し方が似てたな」
「うん・・・純粋で無垢で素直。かわいいね」
「さて、日が暮れる。行くぞ」
「うん」
そして廃屋に着いた二人は、ざっと今夜寝る場所の掃除だけを済ませそのまま褥に入った
「政宗・・・なんか・・・ごめんね」
湖は、羽織から顔を覗かせ政宗の方を向く
その頭には猫の耳
「なにがだ?」
肘を突き、湖の方を向きながら横になる政宗
「その、私がこんなんだから・・・付き合わせて」
湖は自分の耳を軽く触った
「・・・そうだな」
「あとは・・・また勝手に城も出て・・・」
「それは、鈴を追いかけたからだろ」
「・・・うん」
政宗は穏やかに湖を見ていた
「それから・・・」
「それから?なんだ?」
頬をくすぐる指先
抱き寄せる片腕の力
「それから・・・」
「・・・それから?」
触れるだけの口づけ
廃屋の室内は暗く、少し開いた戸口から月光りが入るだけ
「・・・政宗」
ふるりと震える耳に、思わず苦笑する政宗
「これ、可愛いな」
ピンと耳を跳ねれば、湖は目を細めてそれを隠すように手で押さえる
「やめっ、だめだよ」
寝衣はあいにく持ち合わせていない
今宵はこのままでと、薄い褥に潜り込んでいるのだ
狭い褥でお互いの露出した部分の肌が触れれば、そのぬくもりに湖は息を付いた
「・・・なんだか、久しぶりで・・・すこし照れるね」
へへっと、緩く笑って政宗の胸に額を押しつけてくる湖
「そうだな・・・おかえり。お前のいない間、十分我慢させられたな」
「我慢?」
「そうだ、これ以上・・・お預けはごめんだぞ」
「お預けって・・・っ」
がばっと顔を上げて、政宗を見つめればその瞳は色香を含み湖を見下ろしている