第20章 私が猫で、猫が私 (裏:安土組全員)
ククッと含み笑いをしながら話す光秀に、秀吉は
「信用を失わさせるなよ・・・光秀」
と、馬上の光秀を見上げて言った
「・・・善処しよう」
目を見開いた光秀は、すぐにいつものように笑うとその場を去って行った
秀吉に土産を残して
「・・・くそ・・・」
秀吉は、媚薬の入った小瓶を懐に仕舞って家に入っていった
戸を開けたところで、湖の身体が起き上がる
「ひでよし・・・さん?」
眠そうに目を擦りながら、自分を見てくる湖に小さく笑う秀吉
「悪い、起こしたか?少し見回りに行ってきた」
「ううん・・・大丈夫・・・」
手を付き、台所の方へ降りてくる湖
その表情は寝ぼけているような感じだった
「どうした?」
「うん・・・お水・・・喉、かわいた・・・」
「水」そう言われ、自分の懐に仕舞った媚薬を思い出す秀吉はぴくりと身を揺らした
(・・・光秀の言う通り・・・ゆっくりは出来ない状況なのは確かだ・・・隣国の同士の小競り合いも気にはとめていた。信長様も近々収まらないようならば動くはずだ・・・別の方法・・・見つかるのか?)
「秀吉さんも、お水飲みますか?」
器に、水を入れ湖が秀吉に差し出した
「・・・ああ。ありがとう、湖」
秀吉は、それを一口含む
湖は、自分の分も・・・と、水瓶の所へ引き返すようだった
そのすきに、懐に仕舞ってあった媚薬を水に入れる秀吉
「・・・湖、ありがとう。結構、余ってるぞ。これを飲んだらどうだ・・・」
「え・・・?うん・・・そうだね、洗い物増えちゃうし・・・ありがとう」
振り返った湖は、秀吉の元に引き返しその器を受け取る
その際、秀吉の顔を見ていれば湖は飲むのを止めたかも知れない
だが、寝ぼけままの彼女は器を受け取ると、コクコクとそれを飲み干してしまった
「っ・・・」
(湖、悪い・・・)
「ふぅ・・・、ん。なんか甘いお水だった」
ふふっと笑う湖に、秀吉は小さく「悪いな」と謝った
「秀吉さんも、もう寝ますか?」
「ああ、もう休むよ」
そう言い、二人は褥へと戻っていく
湖は、ころんと横になると秀吉をみて微笑んだ
「私たち、なんだか本当の兄妹のようですね」