第19章 私が猫で、猫が私
「な、何言ってるんですか?!信玄様、こんな猫娘・・・」
幸村が湖の尻尾を握った
「ひゃぁ・・っ」
すると、この場に相応しくない声が一瞬上がる
声を上げた湖は、ばっと両手の平で自分の口を塞ぎ俯く
抱えていた信玄も、信長も、他の武将も再度湖を注目すれば、耳から首の後ろまで真っ赤に染まっているのが解る
「・・・湖・・もしかして・・・」
片手で抱え直すと、信玄は伏せている耳を再び触ろうとする
その手を両手で止めると、ふるふると頭を振る湖
「だ、だめですっ・・」
その顔は、目が潤い頬が染まり・・・
ほとんどの者が、それを察する中
一人、尻尾を握った幸村だけが疎い
「な、なんだ。変な声上げるなよっ・・・」
「あ・・・幸村っ・・・」
佐助が止めようとした時には遅く・・・握っていた尻尾から手を滑らせる幸村
「なんだよ・・・っ」
「ふっ、ぁ・・・」
ぞくりとした感覚が身体を通る
同時に耳はこれ以上にないほど伏せ震える
(これっ・・絶対まずい・・っっ、、、)
目を瞑ってその感覚を収めようとする湖
「なるほど。今の湖様に取って耳と尻尾は性感帯ですね」
それを、ずばっと言い切るのは三成だ
(っ・・・)
言い当てられ信玄に抱えられたまま身を固める
「せ・・・性・・・っ?!なぁ・・ッ・・・」
ようやく理解する幸村は、これ以上に無いくらい赤い
(ううーーー気まずい・・・よ・・・ぅ・・・)
同じく顔を染めるのは湖
静まりかえる中、佐助が咳払いをし手を上げ発言する
「はい、みなさん。この姿の湖さんを連れ帰るのは外見上まずく、また戻ったとしても、湖さんもこの尻尾と耳が消えるまで生活にも支障をきたす。という事で認識間違いは無いと思うんですが」
「何が言いたい、佐助」
「複数で湖さんを保護するより、一人がつきっきりで保護した方が湖さん的にも皆さんにも負担が掛からないと思います。そちらの事情と経緯は今日、安土城下で噂されていた事でしか把握していませんが・・・湖さんは今別人として城に居たはずです。噂の鈴姫として帰るにも、湖姫として帰るにも今は無理ですよね」