第19章 私が猫で、猫が私

ふわりと毛が指先に触れる
そして、太ももにも先ほどからふわふわと何かが触っている

（もし･･･かしなくても･･･これって･･･）

秀吉に抱えられたままの湖がだんだんと青ざめていく

「尻尾と耳…」

びくんと、尻尾と耳が反応を示すように動く

「･･･ど、･･･」

頭上の耳が伏せ震えている

「ど？」

湖が、何かを呟いたのを聞き秀吉がそのまま繰り返した

「･･どう、しよぉ･･･」

その顔をのぞき見れば、視線は固まり青ざめ混乱し思考が停止しているかのようだった

「そうだな･･･」

秀吉が湖を下に下ろせば、湖についた尻尾と耳を観察するかのように、三成、光秀、佐助が近づく

「しっかりくっついていますね」
「くっついている･･というより、生えてるんだろう」
「･･･コスプレですね」
「こす･･ぷ？？なんですか？」

耳を摘まんだり、尻尾を触ったり

その一方、秀吉は信長を見て

「元に戻ったのは良いですが･･･さすがにこの状態では、湖は連れて帰れませんね」
「ほとほと飽きない娘だな･･･」
「いずれ戻るだろうさ･･･それまで、次は俺の御殿に匿う。なんか、薬とか無いのか？」
「薬･･･これに、薬を作れと？こんな症状になる人間、生涯誰も居ませんよ･･･」

それに政宗も加り、家康は呆れながら横目で湖を見る

（だ･･･っだめだ、、この耳と尻尾･･･なんか･･）
「っ･･･」

触らないで下さい。そう言おうとしたとき、湖の前に影が落ちた

「いいじゃないか。かわいいぞ、湖」

そこに一声出したのは、信玄だ

「近くで見せてごらん･･･やっぱりかわいいな、首輪を付けて繋いでおきたいくらいだ。今からでも、俺の姫としてこちらにおいで」

三人に囲まれていたはずの湖は、するりと間を割って入ってきた信玄に抱えられ、その指で耳を撫でられる
ふわりと笑う信玄の表情のせいか、それとも耳に触れられたせいか、ぞくりと身体が疼いた

「っ･･･」

「貴様、この場になぜ居るのかは知らんが･･･それの主は俺だ」
「この状態で連れ帰るのは困難なのだろう？ならば、俺がもらい受ける」

びりびりと空気が揺れる