第19章 私が猫で、猫が私
また別の場所では・・・
安土に向かう街道、雨の中、農夫が森に向かって手をすりあわせて拝む姿が目にとまる
「おい、じいさん。こんな雨の中でどうしたんだ?」
「・・・見ちまったんだ・・・」
赤い着物の男が、馬から下り農夫の肩に手を当てた
「ありゃ、神様だ・・・きっと狐様に違いない・・・」
「神だと?」
「なんか、見間違いたんじゃないか?」
「いんにゃ。見間違えねえ・・・すぐ目の前で見たんだ。耳の生えた女子が二人、歌いながら森の奧に進んでいくのを・・・それに、甘い花の香りまでした・・・あれは、きっと神様だ」
農夫が、その場に座って手を合わせ続ける
「耳の生えた女子・・・?」
「甘い花の香り・・だと・・・・・・信玄・・・」
「あぁ。気になるな・・・ちょっと寄ってくか、謙信」
信玄と、謙信が馬を降り、農夫が拝む先へと進んでいく
雷がまた近づいた
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「城下には目撃情報は一つもありませんでした。で、あれば・・・森に向かわれた物と思われます」
三成は、城から一番近い森への道を指し武将達は獣道を馬で駆けていく
「女の足でどのくらい進める」
「さほど、進めんだろうが・・・この方向が気になるな・・・今朝ほど、山賊を討伐した方向だ」
政宗の問いに、光秀が答えれば、四人全員が無言になり先を急いだ
やがて程なくして家康と合流をする
城の方へ引き返した家康、合流地点まで鈴が見当たらないことを確認し先へと馬を進めた
そこで、家康は鈴の行動を秀吉から初めて聞くことになった
「はぁ・・・昨日の今日でまたこの騒ぎですか・・・」
「間が悪かっただけだろう・・・この雨、しのげていれば良いが・・・」
秀吉は、雨の様子を見て更に心配な表情を見せた
その後ろから蹄の音が聞える
五人は、そちらに警戒の視線を向けるが・・・
「貴様ら、まだ湖と鈴は見つからんのか・・・」
聞えてきたのは、信長の声
「の、信長様っ・・信長様まで・・・」
「一向に知らせが来ぬ。ならば、自ら動くまでだ」
「・・・城、がら空きじゃないですか・・・」
「問題無い。柴田らが居る」
慌てる秀吉に、ため息を付く家康
それに対し、信長はニヤリと口元に笑みを浮かべ答える