第19章 私が猫で、猫が私
「こ、これで取引だ!こいつは売れば金になるっこれで、見逃してくれっ!!」
「はぁ・・・何言って・・・っ」
山賊の手元にある青い髪飾り、それには見覚えがあった
光秀が鈴に付けた髪飾りだ
(鈴の・・・?いや、まさか・・・城から出るはず・・・)
家康が黙ったのを、考慮しているとみた山賊はそれを家康の方へ投げてよこした
家康は、下に落ちたそれを馬から下り拾う
(・・・瓜二つ・・・?)
ただそこからは、かすかに鈴の香りがする
(いや・・・鈴のだ・・・どうして、こんな所に・・・)
「だ、旦那、それやるから・・・馬よこせよ」
山賊達が家康の元に近づく
そして、その手を手綱に掛けようとしたところで鼻先に刀が突きつけられる
「っひぃ・・」
「誰が、取引するって言った・・・お前達に、聞きたいことがこれを何処で手に入れた」
先ほどに増し、冷たさを増す家康の瞳に山賊三人は凍り付き
拾った場所を話す
家康はそれを聞くと、三人に向かって言った
「優先事項が変わった。今後、信長様の領土に一切踏み込むな・・・」
そう言い、馬に乗り山賊達の前から去って行く
枝に絡まっていた
高さ的には、丁度湖の身長と同じくらい
だとすれば、歩いたことになる
なぜ、こんな城から離れた場所に鈴が居るのかは解らないが、この髪飾りは間違いなく鈴のもの
(なにやってんのさ、くそっ…そんなに濡れてない…この近くにいるのか)
獣道を馬を走らせ鈴を探す家康
その表情は明らかに変わった
雨の滴が、額に落ちる
細められた瞳には焦りの色が見えた
雷が近づいてくる
だが、雨は激しさを失い霧雨のようになってきた