第19章 私が猫で、猫が私
翌朝
いつもより早い朝、女中に起こされる前にめずらしく起きる鈴(人)の横には、丸まりもぞもぞと動く湖(猫)
「・・・」
くぁーと大きな口を開けると、尖った歯がいくつもみえる
「湖、おはよ?」
起こしに来た女中に身支度を済ましてもらった鈴(人)が、湖(猫)を抱くと首を傾げた
「ねむい?」
「そうですね、確かに。今日の湖ちゃんは眠そうですね。鈴姫様は昨夜、よく眠れましたか?」
髪を結いながら女中が聞けば、鈴(人)は「うん!」と機嫌のよい返事をしてみせる
(お顔は、一緒なのに・・・湖様と鈴様では全く違いますね・・・そう言えば、お年を聞いていない・・・)
「鈴姫様は、今年でいくつになられますか?」
「ことし…いくつ?」
「えっと、何歳になられますか?」
「なんさい??」
「いえ。いいです・・・大丈夫ですよ、姫様」
(身体が成長されても内面が成長されないご病気だと三成様がおっしゃっていましたね・・ですが・・・こう黙っていらっしゃれば、湖様とほとんど同い年・・・双子かもしれませんね・・・湖様が戻られたら聞きましょう・・・)
「はい、鈴姫様。出来ましたよ」
髪飾りには、昨日光秀が買ってきてくれたものを付けた
「鈴、かわいい?」
「ええ。とても可愛らしいです」
今日の鈴は、形は同じだが政宗が送った着物を着ていた
青藤色の着物に、薄紅梅色のスカート
そして、今日は手元に可愛らしい草履を持っている
「鈴姫様、そちらはどうされたんですか?」
草履を不思議に見て問えば、「もらった」と答えるだけの鈴
「さようでございますか・・・お庭に降りる際に、ご利用くださいね」
女中がそう言うと、鈴(人)は湖(猫)と草履を抱えて走り出していた
「それにしても・・・湖ちゃん、眠そうだったわ・・・」
そう言い、手元の櫛をしまうと仕事に戻っていく
一方走って行った鈴(人)は三成の部屋に向かったがそこは誰一人居ない、信長の天主も、広間も・・・