第19章 私が猫で、猫が私
桶に入ったままの猫が怒りの声を上げた
「湖?」
湖(人)は、光秀に何処を触れられてもきょとんとしている
「光秀、湖をからかうな。鈴、来い。冷えるぞ」
「にゃぁ」
「そうだな。さて、約束の時間だ」
水鉄砲が二本
一本は、鈴(人)に
一本は、光秀が
湯に浸かった二人が始めたのは、岩に付いた目印を狙って的当てゲーム
「むずかしい」
「勢いが足りないんだ。こう押し込め」
端から見れば、裸の二人が絡み合っているようにも見える異様な光景
「中身が鈴だと解っているが・・邪魔したくなるな」
政宗が、湖(猫)の眉間を撫でた
結局、鈴がのぼせるまで湯に浸かり、予想はしていたが二人に着替えまでさせられ
広間に戻り始める三人と一匹
二人の男は機嫌良く、女はのぼせて担がれ、猫は疲れ切っている
「家康」
襖が開いて預けられた鈴(人)
「なにやってんですか」
家康は光秀から鈴(人)を受け取ると、鈴をその場に枕を作って寝かせる
そして、その身体を扇子で扇ぐ
政宗は、濡れた髪を手拭きで拭きながら空いている手で持っていた猫を三成に渡す
「湖様?」
懐から取り出した手拭きで、その毛を丁寧に拭くが反応が薄い
「あぁ。湖は今・・心に軽傷負っている感じだ」
「はぁ?何をしたっ政宗」
「俺ではない」
「・・・光秀」
じろりと、秀吉が光秀を睨む
「一通りだ。脱がせて湯着を着せ、洗ってやって、湯に浸かり湯あそびをし、のぼせた鈴を担いで着替えさせた。以上だ」
「以上だと・・・」
「女中を呼ばれなかったのですか?」
秀吉が絶句、三成も驚いて声を出す
「あんた・・」
家康は、光秀を睨む
「言っただろう?今宵は、俺が面倒を見てやると。何もやましいことはしていない、政宗に聞けば解ることだ」
「まぁ、そうだな」
「馬、鹿、か!湖の事を考えてやれっ!くそっ、やはりお前に預けるのは止めれば良かった・・」
「・・湖様・・・なんというか・・・お疲れ様でした」
この夜、鈴は逆上せて居たこともありぐっすりと眠り、湖は忘れたい光景を夢に見てよく寝たとは言えない朝を迎えた