第19章 私が猫で、猫が私
ニヤリと口角を上げる政宗
光秀も止めようとしない
『にゃー、ぎゃー!!』
湖(猫)だけが慌てふためき止めようとするが、鈴(人)の手が止まるわけが無い
すべて脱ぎ終えた時には、もう叫ぶ事すら出来ずにその場に伏せこんだ猫
「いくらなんでも、それ(裸)じゃ秀吉に怒られるな・・・鈴、これを羽織れ」
そう言い、湯着を着せた光秀
光秀と政宗もまた着物を脱ぎ腰巻きだけの状態になった
政宗は、空になった桶に猫を入れ
光秀は、鈴(人)の手を引き進んでいく
(もういい・・・好きにしてください・・・)
湖(猫)はもう諦めた
鈴(人)は風呂で遊べることに夢中で、光秀の誘導にしっかり乗り、苦手な頭から湯を掛けられるのも、洗われるのも、これまでになく大人しく言うことを聞いて居た
一方、疲れたように動かない湖(猫)は、政宗に洗われ今は桶に入り湯に浮かんでいる
桶の中で丸まっている猫に話しかける政宗
「まさか、猫と湯に浸かる事があるとは思ってなかった」
(私だって、こんな状態でお風呂にはいるとはおもっていませんでしたよ・・・)
「二度目だな」
(・・・?)
顔を上げると、直ぐ側に政宗の顔があった
「あの時は、刀を突きつけて悪かったな」
ふと笑う顔にをじっと見る湖(猫)
(あの時・・・あ・・・ここに連れてこられた初日だ。確かに政宗には湯殿で首筋に刀を当てられた・・・)
あれから半年は過ぎている
既に懐かしい記憶に思えた
「湖、ちゃんとした!鈴、えらい?」
洗い終えたのか、鈴が湯場を走り出す
「鈴、走るな。転ぶ」
光秀がその腕を掴み、鈴を止めた
見れば、鈴の湯着は透け着物が張り付きまるで春画のようだ
降ろした髪のせいでますます湖自身に見える
いや、湖の身体で間違いはないのだが・・・
(・・・もう、いいよ・・諦める。別に、見ても色気も感じないし・・・)
半泣き、やけくその状態の湖(猫)の心中を悟ったように、光秀が笑った
「そう嘆くな、湖。なかなかそそられるぞ。湯着を着ているのがまたいい。見ろ、胸の頂なんかは旨そうに色・・・」
『ふぎゃーーー!!!』